研究課題/領域番号 |
23656215
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中村 敏浩 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (90293886)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 電子・電気材料 / 電子デバイス・機器 / 磁性 / 抵抗スイッチング / メモリスター |
研究概要 |
本研究は、ペロブスカイト型Mn酸化物薄膜を用いたバイポーラー抵抗スイッチング素子において、電気特性と磁気特性の相関関係を調べることにより、そのメモリスター応用に向けて、素子の構成材料の物性を最適化することを目的としている。平成23年度は、磁気機能を有するペロブスカイト型酸化物薄膜のドーパントの密度を系統的に変化させ、それが素子の電気特性に及ぼす影響を明らかにする作業を進めた。具体的には、電極間のキャリアドープ量(Pr/Ca元素組成比)を変調したPr1-xCaxMnO3薄膜を用いた素子を作製し、その電流-電圧特性に見られるヒステリシスがどのように変化するのかを調べた。また、電流-電圧特性の評価のみならず、電気パルス誘起抵抗変化の評価や電気化学インピーダンス測定を進めた。その結果、抵抗スイッチングは、薄膜材料そのものの抵抗変化よりもむしろ薄膜-電極界面の抵抗の変化が大きく寄与しており、その電極界面の抵抗成分はCa置換量が多いほど増大することが確認された。すなわち、電極間のキャリアドープ量(Pr/Ca元素組成比)という薄膜の物性が、薄膜材料そのものの抵抗変化のみならず、電極界面の抵抗成分にまで大きな影響を与えていることが分かった。上記の結果を踏まえ、薄膜で生じている物理化学現象に注目し、分光エリプソメトリー法による解析にも着手した。抵抗スイッチングに伴うエリプソメトリースペクトルの変化を測定したところ、交流インピーダンス法により得られる薄膜材料そのものの抵抗変化との間に相関関係が存在することを示唆する結果が得られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、Pr/Caの元素組成比を変えることにより系統的にドーパント密度を変えたPr1-xCaxMnO3薄膜を用いた素子を作製し、電流-電圧特性の評価のみならず、電気パルス誘起抵抗変化の評価や電気化学インピーダンス測定により、その素子の特性解析を進め、基礎データを蓄積することができた。また、薄膜で生じている物理化学現象に着目して、分光エリプソメトリーによる解析にも着手することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
Pr1-xCaxMnO3薄膜を磁性金属電極で挟んだ2端子抵抗スイッチング素子を作製し、その電気特性を測定し、従来の非磁性金属を電極に用いた素子と同様の特性を示すのかどうかを確認する。具体的には、作製した素子について、電流-電圧特性、電気パルス誘起抵抗スイッチング特性、電気化学インピーダンス特性の評価を行い、非磁性金属を電極に用いた素子の特性と比較する。これにより、電極の酸化しやすさや仕事関数以外に、電極金属の磁性による影響が無いかどうかを調べる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
成膜実験に必要な基板材料、高純度プロセスガスなどの消耗品の購入のために使用する予定である。その他には、成果発表のための旅費に加えて、研究成果投稿料等にも、得られた研究成果を広く発信するために使用する予定である。
|