研究課題/領域番号 |
23656216
|
研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
山下 兼一 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 助教 (00346115)
|
研究分担者 |
小滝 雅也 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (00282244)
|
キーワード | 高効率太陽光発電材料・素子 / 高分子構造・物性 / ナノ材料 |
研究概要 |
本研究では、3次元的ナノ構造を有機薄膜内へ制御形成することにより有機薄膜太陽電池の性能を劇的に向上させることに挑戦する。その方策として、光吸収層内において高密度にマトリクス化された導電性高分子ナノファイバとフラーレン誘導体からなる有機半導体ヘテロ構造をはじめとした新規のデバイス構造を検討する。 前年度は、エレクトロスピニング法を用いて作製したP3HTナノファイバとPCBMからなるヘテロ構造薄膜を作製し、その光電変換特性を評価した。その結果、実際に光起電力特性が生じることは示されたが、その変換効率は0.1%以下と小さかった。これはナノファイバの直径が数100nm程度と通常のバルクヘテロ構造のドメインサイズより大きいことなどがあげられる。 今年度はまず、P3HTナノファイバ/PCBMヘテロ構造での光電変換効率改善につながる知見を得るために、その光応答特性の詳細な評価を行った。暗状態から光照射のONに対する光電流の時間的応答を観測したところ、バルクヘテロ構造では照射と同時にほぼ一定の光電流が得られるが、ナノファイバを用いた場合は照射後すぐに急激な光電流の減少を示すことが分かった。通常の太陽電池特性評価の際には照射後十分に時間が立った定常状態での電流値を記録しているが、照射直後は比較的高い電流値が得られていることになる。このような結果の原因としては、光照射により生成されたキャリアが薄膜内で蓄積していき、素子自身がコンデンサ的な特性を強く持つようになったためであると考えられる。例えば電極とナノファイバ間の接触不十分などが考えられる。 また、3次元的ナノ構造の制御形成という同様の目的で、相互浸透構造を持つドナー/アクセプタのバイレイヤー構造のインクジェット法による作製についても検討を開始した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
P3HTナノファイバを用いた有機薄膜太陽電池素子の詳細な電気特性評価とその物理機構の考察という当初の目的はおおむね実施できていると考えている。高効率化に向けての研究開発の指針も得られており、ナノファイバを使用することが光電変換の高効率化に有用であることも確認された。P3HTナノファイバ自身の光学的、電気的特性の解析も進んでおり、今後はさらに微細なファイバ径にて実際に素子を作製することを検討中である。一方、この材料系での実験結果を基にしてのバルクヘテロ接合型太陽電池の動作機構解明についてはまだ有力な知見は得られていないが、インクジェット法による相互浸透層形バイレイヤー素子や色素ドープバルクヘテロ接合型太陽電池素子などに関する結果から相補的な解析を進めることができている。
|
今後の研究の推進方策 |
当初予定では本研究はH23-H24年度の2年計画としており、実際にこの期間内でおおよその研究目的を達成できている。しかしながら、その研究成果報告の一部などが期間内に完了できていないため、1年間の期間延長を行う。その間は引き続き、P3HTナノファイバサイズの低減と電極との接触抵抗低減を中心に検討、考察を進める。
|
次年度の研究費の使用計画 |
前年度中の早い時期にと期待していた相互浸透構造型太陽電池に関する研究成果の取得が予想以上に遅れため、その成果発表のために準備していた予算が残った。そこで今年度は、研究期間延長の制度を活用し、前年度までに得られた研究成果の発表費用として残額を使用する。具体的には、論文投稿費、学会発表旅費、学会参加費としての使用を計画している。
|