研究概要 |
本研究では、我々により超高速(サブピコ秒)のキャリア緩和を示すことが見いだされたEr,O共添加GaAs (GaAs:Er,O)を新しいテラヘルツ波発生/検出用材料として位置づけ、そのデバイス応用可能性を明らかにすることを目的とする。具体的には、GaAs:Er,Oの成長条件や素子構造の最適化を通じて、テラヘルツ波発生/検出素子を試作し、その究極性能を明らかにすることを目指す。 平成24年度は平成23年度の研究課題を継続的に発展させながら、テラヘルツ波検出素子の作製・特性評価および、素子性能の向上に取り組んだ。 【課題3】テラヘルツ波検出素子の試作・特性評価: テラヘルツ波発生素子として用いたものと同様の構造を有する光伝導アンテナのテラヘルツ波検出性能を室温で評価した。テラヘルツ波の発生にはLT-GaAs光伝導アンテナを用いた。照射するフェムト秒レーザの照射パワーと印加電圧をパラメータとして、試作したGaAs:Er,O素子の性能を評価した結果、テラヘルツ波の検出に、世界で初めて成功した。しかしながら、LT-GaAsと比較するとS/N比が低く、信号強度自体も1/100程度であった。性能向上に向けて、素子構造やデバイス加工プロセスの最適化が今後の課題である。 【課題4】多層構造素子の検討: これまでのGaAs:Er,Oテラヘルツ波発生/検出素子はGaAs基板上に成長したGaAs:Er,O単層膜を用いてきた。様々な層構造試料から光伝導アンテナを作製し、そのテラヘルツ波発生性能を評価した結果、n+-GaAs基板上に無添加GaAs、GaAs:Er,Oを順次、積層した構造において、テラヘルツ波放射強度の増大を観測した。この結果はテラヘルツ波放射強度の増大に向けて、素子に用いる層構造設計の重要性を示唆している。
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