研究課題/領域番号 |
23656223
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
浜屋 宏平 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 准教授 (90401281)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | スピントロニクス / ホイスラー合金 / 分子線エピタキシー |
研究概要 |
本研究は,強磁性材料の低温分子線エピタキシー(MBE)成長技術を活用して,Si基板上に様々なスピン生成効率を有する微小スピン注入電極を自由に面内配列する新技術を創成し,多様な性能を有するスピントロニクス素子を同一基板上に集積する技術を構築することを目的としている. 本年度は,既にSi基板上にエピタキシャル成長可能なことが分かっているFe3Si薄膜の上部に,同じ結晶構造を有する別のホイスラー合金であるCo2FeSiやCo2MnSiを成長する技術を検討した.同一装置を用いたIn-situ作製のため,先ず,Si(111)面を利用してFe3Si薄膜を膜厚5 nm程度成膜し,直後にCoやFeやMnのK-セル温度をチューニングすることで組成を変調することで,Co2FeSi薄膜およびCo2MnSi薄膜の成長を試みた.シリサイド反応を防ぐために,基板温度200度以下という低温成長を利用した.Co2FeSi薄膜は2次元エピタキシャル成長する事が確認されたが,Co2MnSi薄膜は3次元成長した.また,飽和磁化を測定したところ,Co2MnSi薄膜は報告されているバルク値の1/3程度の磁化しか得られなかった。これらの薄膜は,Si基板上への直接成長においても同様の傾向を示す事が分かっている.つまり,今回の実験で明らかになった事としては,Si基板やGe基板上へ2次元エピタキシャル成長することのできないホイスラー合金は,Fe3Si薄膜上であっても全く高品質にはならないという事である. 今後は,横型スピンバルブ素子を用いたスピン流生成実験と,面内スピン偏極率の制御に向けた微細加工技術を検討する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々が世界で始めて技術的に確立したホイスラー合金を用いた純スピン流の検出技術を、様々なホイスラー合金材料のスピン流生成・検出技術へのおうようするため,組成変調技術を利用した結晶成長を検討した.本年度は,予想通りの結果を得る事ができ,更に,面内スピンバルブ素子の研究においても,一定の成果を得る事ができた.
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今後の研究の推進方策 |
Co系ホイスラー合金と呼ばれる単結晶強磁性合金材料において,スピン偏極率の異なる薄膜組成をナノメートルオーダーの精密制御技術を確立する.低温MBE法によるホイスラー合金薄膜堆積時の蒸着源(Kセル)温度を精密制御し,構成元素(FeやCo)の結晶サイト置換を人為的に制御することで,スピン流生成能力の全く異なるFe系ホイスラー合金とCo系ホイスラー合金を積層する.最後に,この積層薄膜をスピンデバイスのスピン注入電極へ応用するため,二層マスクを利用した低加速電圧ドライエッチング加工を導入し,同一基板上の微小領域内に様々な性能のスピンデバイスを実証する.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は主に、23年度に達成した薄膜を使ったデバイスの作製、およびスピン機能の評価研究を遂行する予定である。従って、低温測定系への寒剤の供給が必要となり、主に、研究経費は液体ヘリウムの購入費用にあてられる。さらに、もし余力があれば、研究成果を国内外へ発信するために、旅費として利用する予定である。
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