研究課題/領域番号 |
23656232
|
研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
入江 晃亘 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90241843)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 二次元層状構造 / スピントロニクス / 高温超伝導体 / 超伝導材料・素子 / 磁気抵抗 / 低温物性 |
研究概要 |
本研究は,層状酸化物高温超伝導体に内在する二次元超伝導層におけるスピンに依存した新奇な量子輸送現象を明らかにするとともに,二次元超伝導層をチャネルとした電界効果型超伝導スピントランジスタの可能性を探求することを目的としており,本年度は以下の研究を進めた.本提案の超伝導スピントランジスタを実現するためには,チャネル部を細い二次元層状超伝導体で構成する必要があり,本研究では従来の単結晶を微細加工する方法ではなく,針状のBi2Sr2CaCu2Oyウィスカー単結晶をチャネルに用いることとした.同ウィスカー結晶はTe添加法により作製し,焼成時間,焼成温度,焼成雰囲気等を変えることにより幅15~90m,長さ1~7mmの結晶を得ることができた.また,作製した結晶の臨界温度は84Kであった.同結晶の長さ方向にCo電極を2つ形成することにより作製した超伝導トランジスタの基本構造(ソース-ドレインのみ)の磁場中の電気伝導特性を77Kにおいて評価したところ,ヒステリシスをもつ磁気抵抗の磁場依存性が観測された.この結果は,同結晶の面内方向の超伝導特性が磁性体からのスピン注入により変化したことを示しており,面内方向の輸送においてもスピン偏極がある程度保存されていることを見出した.本年度は,磁場印加によるスピン注入効果を中心調べたが,次年度は基本構造にゲート電極を付加し,スピン偏極電子に対する電界効果について調べる予定である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超伝導スピントランジスタで重要となるチャネル部に針状の二次元層状超伝導体結晶を採用することにより,明瞭な磁気抵抗の変化を観測することに成功しており,超伝導スピントランジスタ応用への足がかりを得ることができた.
|
今後の研究の推進方策 |
本年度,磁場に依存した磁気抵抗の変化を観測することに成功したが,ウィスカー結晶の表面層の問題から結晶とCo電極間の接触抵抗にばらつきがみられた.二次元超伝導層に効率よくスピンを注入するためには,結晶と磁性体の良好な接触を実現しなければならず,次年度は,接触抵抗の改善に向けた検討を行う.また,観測された磁気抵抗効果の詳細な解析を進めると共に,二次元超伝導層をチャネルとするFET構造を作製することにより,スピン輸送特性のゲート電圧依存性を明らかにし,電界効果型超伝導スピントランジスタの試作・動作実証を行う.
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度は,実験を遂行するための消耗品並びに研究成果発表のための旅費等に使用する予定である.
|