研究課題/領域番号 |
23656237
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
斉藤 輝雄 福井大学, 遠赤外領域開発研究センター, 教授 (80143163)
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研究分担者 |
立松 芳典 福井大学, 遠赤外領域開発研究センター, 准教授 (50261756)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 国際研究者交流、ロシア連邦 / 光源技術 / 子デバイス・電子機器 / テラヘルツジャイロトロン / 電子銃 |
研究概要 |
本研究の目的は、テラヘルツ帯において画期的高出力を実現する発振管「ジャイロトロン」用の小型大電流電子銃を開発し、出力飽和の原因になる有限電荷効果を抑制し、2次高調波では0.4 THz帯、100 kW級のジャイロトロン、基本波では0.3 THz帯、200 kW級のジャイロトロンを実現するための電子銃設計手法を確立し、さらに本研究の成果をジャイロトロンの小型化に結びつけることである。本研究は2年計画であり、初年度の23年度は、電子銃における有限電荷効果を抑制する手法の開発とその妥当性評価、この結果を取り入れた電子銃設計の以下の順に進めた。先ず、電子銃から放出される電子ビームにおける有限電荷効果を定量的に評価する手法を独自に開発した。次に、この評価法を既に開発済みの電子銃設計コードに適用し、既設2次高調波ジャイロトロンの電子銃特性を最適化できる運転パラメータを算出した。この段階でニジニノブゴロド州立大学マヌイロフ教授を研究協力者として招へいし、この算出手法の正しさを検討した。このパラメータでジャイロトロンを運転したところ、加速電圧60 kV、電子電流10 Aにて、周波数389 GHz、出力83 kWの2次高調波単独発振出力を得ることに成功し、設計手法の妥当性を確認した。特に、有限電荷効果の定量的評価手法の有効性を確認できたことは大きい成果である。この成果を研究代表者が所属する福井大学遠赤外領域開発研究センターのプロジェクト研究として進める基本波発振0.3 THz帯、200 kW級のジャイロトロンに用いる電子銃の設計に適用し、加速電圧65 kV、電子電流10 Aにて、ピッチ因子1.2以上、速度広がり3%程度の低分散電子ビームを生成できる電子銃の設計に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
テラヘルツ帯ジャイロトロンでは空洞半径が小さく、有限電荷効果による電子ビーム特性の劣化が大きい問題であり、本研究ではこの抑制が主要課題である。23年度は、有限電荷効果の定量的評価法の開発に成功したことで、電子銃の最適設計を見通しよく進める基礎固めをすることができた。これは、当初研究計画で挙げた第一課題の達成である。つぎにこの手法を既設ジャイロトロンの電子銃運転パラメータ最適化に適用して、これまでの出力記録を大きく更新し、新手法の妥当性を確認した。さらに、新規製作の基本波ジャイロトロン用電子銃設計にこの手法を適用して、極めて良好な特性が期待できる電子銃設計に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
24年度は、福井大学遠赤外領域開発研究センターのプロジェクト研究として進める基本波ジャイロトロンの発振特性データを解析し、電子銃の動作が設計通りであるかどうかを評価する。特に、長パルス運転時の特性を詳しく解析する。設計上の問題点が明らかになった場合は、改良設計を行う。特に、陰極表面の電界分布を最適化し、大電流・長パルス時の特性劣化を防ぐ設計を行う。大きい問題が出ない場合は、電子電流を20 Aまで増大させても低速度分散性が保持できる設計に挑戦する。上記の方針で設計した電子銃を製作し、実機ジャイロトロンに装着・発振試験を行い、設計の妥当性を評価する。以上の結果を総合し、テラヘルツ帯ジャイロトロン用小型大電流電子銃の設計手法を確立する。
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次年度の研究費の使用計画 |
23年度は、有限電荷効果の定量的評価法の開発とその妥当性評価に重点を置いた。既設ジャイロトロンの最適運転パラメータの算出と実験による確認で研究計画初年度の目的を達成できたため、本課題としては電子銃の製作までは行わないこととした。24年度は、24年度に請求する研究費と合わせて、最高性能を発揮する電子銃を製作する。また、研究協力者の機関研究員を国際会議に派遣して成果を発表するとともに、国内学会においても成果を発振する。
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