研究課題
平成24年度は以下の2点で大きな研究成果を得た。1. ポンプ・プローブ法によるマイクロポストの電子スピン緩和時間の評価電子スピン緩和時間の長い(110)GaAs/AlGaAs-MQWを活性層としたスピンVCSELの1 GHzでの発振円偏光スイッチングを実証した。高速化には、活性層に注入した電子のスピン緩和時間を維持したまま、キャリヤ寿命のみ短縮することが重要である。マイクロポスト構造によってキャリヤ寿命を短縮した時のスピン緩和時間への影響を、ポンプ・プローブカー回転法を用いて評価した。ポストサイズが小さくなるにつれ、ポスト側面における非発光表面再結合によってキャリヤ寿命が劇的に短縮される一方、スピン緩和時間はほぼ一定であることがわかった。0.5 μm角のポストでは、キャリヤ寿命は約30 psと短縮されるが、約0.74 nsの長いスピン緩和時間が維持されることがわかった。2. 長波長帯InGaAs/InAlAs量子井戸中の電子スピン緩和GaAs(110)基板上GaAs/AlGaAs量子井戸では、D'yakonov-Perel'スピン緩和機構が抑制されるため、一般的な(100)基板上量子井戸と比較して、数十倍長い電子スピン緩和時間が得られる。1.55 μm帯の光通信波長におけるスピン光デバイスを目指して、InP(110)基板上InGaAs/InAlAs量子井戸に着目した。MBE法により成長し、その電子スピン緩和時間をポンプ・プローブ法により測定した。InP基板の結晶方位による大きな違いは見られず、室温において1 ns程度、100 Kにおいて1.7 ns程度の値を得た。研究期間全体を通じて実施した研究の成果は、上記の他、(110)スピン面発光半導体レーザの広帯域円偏光発振、および、電子スピン緩和時間測定法に関する検討である。
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