研究課題/領域番号 |
23656242
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
本多 謙介 山口大学, 理工学研究科, 准教授 (60334314)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | アモルファスカーボン / ナノ微粒子 / 電気化学ガスセンサー / 半導体材料ガス / 高感度検出 |
研究概要 |
本研究課題では、化学組成とナノサイズの形状を制御したアモルファスカーボン(a-C)ナノドットアレイ電極を創製し、a-C微粒子の示す特異的な電気化学活性の発生メカニズムの解明を目的とした。さらに、有毒ガスであるアルシン、ホスフィンに対して高活性なa-C微粒子を創製し、これら有毒ガスを高感度に検出可能なガスセンサーの実現を目指した。平成23年度には、電気化学センサーの材料的基礎である化学組成および形状の異なる導電性a-C微粒子の作成手法を確立し、その電気化学基礎特性の解明により、a-C微粒子をベースとした電気化学触媒反応の制御法の確立を目指した。 まず、導電性賦与に用いるp・n型2つの様式における不純物原子の種類、濃度を制御したa-C薄膜の作成を行った。n型不純物として窒素(N)、 p型不純物としてホウ素(B)を導入し、キャリア密度を10~13~10~21 cm-3の範囲で制御することを目指した。平成23年度には、CVD法(出力200 W)によるa-C薄膜合成において、アセトニトリルのn-ヘキサン希釈溶液を原料とし、溶液の濃度制御により、n型キャリア密度(N量)を10~14 cm-3から7.5×10~18 cm-3に変化させることに成功した。また、ホウ素ドープa-C薄膜合成(出力300 W)では、テトラメトキシホウ素のn-ヘキサン希釈溶液を原料とすることで、キャリア密度を10~14 cm-3から1.3×10~19 cm-3の範囲で制御することを可能とした。また、RF出力を50 Wから500 Wの範囲での設定により、sp2炭素量を60から90 atom%に制御可能であった(目標:10~90 atom%)。上記条件でのアルミナ表面へのa-C成膜により、N、B、sp2炭素量の組成が薄膜と等しい、粒子径40nmから400 nmの a-Cナノドット配列媒体の作製に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題申請時の研究計画では、研究開発初年度には、化学組成および形状の異なる導電性a-C微粒子の作成手法を確立することを目指した。(1)アモルファスカーボン(a-C)の化学組成の制御に関しては、キャリア密度を10~13~10~21 cm~-3の範囲で制御すること、sp2/sp3比を10/90~90/10の範囲での制御することを目標とした。また、(2)a-Cナノ粒子の形状に関しては、粒子径:10~400 nmの範囲での制御を可能とすることを目標とした。 平成23年度には、a-Cに窒素原子をドープすることにより、n型キャリア密度を10~14 cm~-3から7.5×10~18 cm~-3の範囲で変化させることに成功した。また、ホウ素原子を添加することにより、p型キャリア密度を10~14 cm~-3から1.3×10~19 cm~-3の範囲で制御することを可能とした。また、成膜時のRF出力をコントロールすることで、sp2炭素量を60から90 atom%の範囲での制御にも成功した。これらの制御範囲は、ほぼ申請時の制御目標値に近い値である。 また、n型キャリア、p型キャリア、sp2/sp3炭素比に関して、上記の範囲の化学組成をもつ、粒子径40nmから400 nm a-Cナノドット配列媒体の作製することを可能とした。したがって、平成23年度は、ほぼ研究課題提案時の目標値を達成することができたため、研究計画通りに進展しているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は、化学組成とナノ形状を制御したアモルファスカーボン(a-C)ナノドットアレイ電極により、有毒ガス(アルシン(AsH3)、ホスフィン(PH3))を高感度に検出可能なガスセンサー実現を目指している。平成23年度には、N添加により、a-Cのn型キャリア密度を10~14 cm -3から7.5×10~18 cm~-3に、また、ホウ素添加によりp型キャリア密度を、10~14 cm-3から1.3×10~19~cm~-3の範囲に制御することができた。また、この範囲の化学組成をもつ、粒子径40 nmから400 nm のa-Cナノドット配列媒体の作製に成功した。 平成24年度には、これらa-Cナノドット配列媒体表面での、ジボラン、アルシン、ホスフィンに対する反応性評価を行い、a-Cの化学組成(B、N、sp2炭素量)とドット形状による有毒ガスに対する反応性制御手法の確立を目指す。 さらに、アルシンとホスフィンを高感度に検出可能な電気化学ガスセンサーの具現化のため、(1)安定性の高い気体透過膜表面のa-Cコーティング技術の確立、(2)アルシン・ホスフィンに対して選択溶解性の高い電解液の探索、(3)アルシン・ホスフィン検出に最適な電気化学検出モード(定電位、ボルタンメトリー)の開発、(4)長期作動信頼性評価 の4段階でセンサー開発を推進し,アルシン・ホスフィン許容濃度である、5 ppb・300 ppbの濃度を高感度に検出可能な長期作動信頼性の高い電気化学ガスセンサーの実現を図る。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究開発最終年度は、a-Cナノドット配列媒体の有毒ガス種に対する反応制御法の確立を図るため、アモルファスカーボンおよびそのドット配列媒体を作製するための材料費、および電気化学測定に必要な試薬・電極材料費(消耗品費)に研究費を使用する予定である。
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