電子散乱のモンテカルロ法と分子動力学法を組み合わせた電子線リソグラフィシミュレーションの開発において、本年度は現像過程のモデルの改良を行った。また、開発したシミュレーションにより、露光条件と現像条件をパラメータとし、形成されるパターン形状やラインエッジラフネスの解析を実施した。 本手法では、分子動力学法の一定の時間ステップごとにモンテカルロ法により求めたレジスト薄膜中のエネルギー吸収分布で重みを付けてレジストを構成するポリマー分子の主鎖切断を導入することでレジスト薄膜の露光過程を再現する。 続く現像過程のシミュレーションでは、昨年度までは分子の現像液界面からの距離は考慮せず、分子量の小さい順にレジスト中の分子を一斉に除去していたが、本年度は現像液界面からの距離に依存した溶解モデルを導入することにより改良を行った。すなわち、レジスト分子を現像液との界面に近い分子から順に除去して行き、現像が進行して新たな界面が形成されるとその形成された界面に近い分子を次に除去することでレジストの溶解過程を再現した。これによりレジスト現像の深さ方向への進行を再現することが可能となった。 開発した電子線リソグラフィの分子シミュレーションにより形成されるレジストパターンのラインエッジラフネスの加速電圧依存性と露光量依存性の解析を行ったところ、電子散乱の影響が抑制される高加速電圧やショットノイズ効果が抑制される高露光量でラインエッジラフネスが小さくなり、実験と整合性のある結果が得られた。
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