研究課題/領域番号 |
23656247
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
陳 強 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30261580)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | アンテナ / 中継アンテナ / 無線通信 / アンテナアレー |
研究概要 |
本年度では,基地局アンテナと中継アンテナ,および中継アンテナと端末アンテナとの伝搬損失を明らかにし,人体近傍における中継アンテナの無線伝送路の設計法を確立した. まず,人体に取り付ける中継アンテナとして,8素子のループアンテナアレーとこれらのアレー素子を連結する集中乗数付ループアンテナから構成する中継アンテナを設計した.前者のループアンテナアレーは基地局アンテナとの通信に使用し,後者のループアンテナは携帯端末用アンテナとの近距離通信に用いる.ループアンテナの集中乗数は,ループアンテナの共振周波数を調整するために使用する. 次に,電磁界の数値シミュレーションにより,8素子ループアンテナアレーの利得の周波数特性,およびループアンテナの利得の周波数特性を求め,アンテナの最適化設計法を明らかにした.その結果,ループアレー素子の周囲長をほぼ1波長程度にした場合,最も高い利得が得られた.また,ループアンテナに挿入する集中乗数のインダクタンスの値を調整し,ループアンテナを共振させることにより,最も高い利得が得られることがわかった.このように,本研究で提案した中継アンテナを構成する二つのアンテナは,アンテナの構造パラメータを調整し,それぞれほぼ独立にアンテナの利得を最大化することができることが分かった. 本年度の研究結果から,人体近傍における中継アンテナシステムの無線伝送路の伝送利得が最大となるような伝送システムの設計法を確立し,伝送利得の実現可能な範囲を定量的に求め,システム全体のリンクバジェットを立てることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では,本年度の研究目標は「主に人体近傍におけるIF無線伝送路の設計法を検討し,設計指針を確立する」としている.上記の研究成果から,本目標を達成していることがわかる. しかしながら,研究計画で予定していたアンテナ間の無線伝搬実験の一部は,年度内に行われていない.これは,3.11大震災の影響で,研究室の電波無響室が危険建物になってしまい,立ち入り禁止となったため,電磁波の実験は一切できなくなったからである. そのため,無線伝搬実験の代わりに,電磁界の数値シミュレーションを行うことにより,アンテナ間の無線伝搬実験を数値シミュレーションで行うことにした.シミュレーションのソフトウェアは,電磁界の数値計算に有効なモーメント法を用いたものであり,数値計算の結果が精度が高く,妥当性に問題がないことを確認したため,電磁界シミュレーションの代用による本研究の進捗に支障はないと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
前年度で検討した中継アンテナの設計指針を踏まえて,中継アンテナの一体化設計を行う.また,人体の影響を考慮したアンテナの設計を行う.さらに,アンテナの利得特性だけではなく,マルチアンテナのMIMO特性の検討も行い,中継アンテナを用いたことによる無線通信システム全体の性能の向上を定量的に明らかにする. 震災の影響で,電磁波の伝搬実験ができない状況が続いているため,実験の代わりに,高性能の電磁界数値解析法を利用した電磁界の数値シミュレーションを行い,研究を進めていく.
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次年度の研究費の使用計画 |
電磁界数値シミュレーションを行うために,計算機使用料として40万円を計上する.また,成果報告と情報収集のために,旅費として40万円計上する.さらに,研究成果をまとめた論文を掲載するための論文掲載料20万円を計上する.
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