研究課題/領域番号 |
23656248
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
橋本 研也 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90134353)
|
研究分担者 |
安 昌俊 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90453208)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 可変フィルタ / ソフトウェア無線 / 高周波フィルタ / 帰還型フィルタ / 半導体集積回路 / MEMS |
研究概要 |
本研究では、弾性表面波・バルク弾性波素子技術と微小電子機械システム技術の組み合わせによる可変フィルタと、半導体集積回路を利用した再帰型フィルタを縦続した構成を基にして、実用的なソフトウェア無線機を構築し、それらの有効性を実証することを目的としている。 まず、半導体集積回路を利用した再帰型フィルタについて、自己発振状態からの発進停止への推移を利用した校正手法を構築し、その設定精度について考察した。そして、数値シミュレーションと実験結果との比較により、試作素子の振る舞いが発振振幅と発振周波数の関係が比較的簡単な非線形モデルでよく記述できることを明らかにした。また、非線形モデルの結果を簡単な数式で表現し、それを利用した発振周波数の設定法を提案した。そして、所望の品質係数がそれほど大きくない場合については、上記の手法で共振周波数とQがかなりの精度で設定できることを明らかにした。 また、この再帰型フィルタに基底帯域信号処理回路を組み合わせてソフトウェア無線機を構築した。しかし、現行の再帰型フィルタは初段の利得が大きく、しかも固定のため、高Qフィルタとして動作させた場合に受信機全体の利得が非常に大きくなり、非線形性が顕著となってしまう問題が明らかになった。現在、初段の利得を可変できる新集積回路を開発中である。 さらに、肩特性が急峻で、通過域が平坦な高次フィルタ実現の可能性を検討した。そして、再帰型フィルタを極性を入れ替えて複数並列接続することにより、高次フィルタが実現できることを示した。現在開発中の集積回路チップにはこの機能も組み込んでいる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実績の概要でも述べているように、所望の品質係数がそれほど大きくない場合については、上記の手法で共振周波数とQがかなりの精度で設定できることを明らかにしており、大きな成果といえる。このため、肩特性が急峻で、通過域が平坦な高次フィルタ実現の可能性が見えてきた。高次フィルタの場合、並列接続する再帰フィルタを独立に、しかも細かく調整する必要があり、今回の成果を発展することにより、フィルタ特性の自動合成も可能と考えている。 また、これも実績の概要でも述べているように、この再帰型フィルタを利用したソフトウェア無線機構築は、非線形性の問題のために失敗している。次期チップにはこの問題に対する対策を施しており、チップが完成し次第、直ちにソフトウェア無線機構築に取り組みたい。
|
今後の研究の推進方策 |
隣接チャネルからの干渉を抑圧には高次フィルタの利用が必須のため、高次フィルタの周波数特性調整法を確立したい。現在開発中のチップには高次フィルタ機能が組み込まれており、これに前年度に開発した再帰フィルタ設定手法を適用し、高次フィルタの自動特性合成法を確立したい。 また、この再帰フィルタを利用したソフトウェア無線機が構築された段階で、通信パケット中のプリアンブルの乱れを利用した動的な自動調整についても検討し、開発された可変高周波フロントエンドを利用してソフトウェア無線機を構成し、その有効性を実証したい。 一方、弾性表面波・バルク弾性波素子技術と微小電子機械システム技術の組み合わせによる可変フィルタについては、まだ素子試作が実現しておらず、実験に進めていない。素子が得られた段階で、できるだけ早い段階で検討に移行したい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
物品として次年度に購入予定のものは、ソフトウェア無線機構築に必要な電子回路部品やソフトウェアと言った少額なものばかりである。また、予算の一部は学会等での成果の発表にも利用する予定である。、
|