本研究では、半導体集積回路を利用した再帰型フィルタを基にして、実用的なソフトウェア無線機を構築し、それらの有効性を実証することを目的とした。まず、フィルタ特性を自動校正する機能について検討した。ループ利得を減少させ、発振が停止した時の周波数がフィルタの中心周波数に相当し、さらにループ利得を減少させた時、その減少量によりフィルタのQが決定されることを利用する。具体的には、自己発振状態の振る舞いがvan der Paul方程式でその振る舞いがよく説明できることに着目し、それを元にして発振が停止する時の周波数を推定し、それが所望の周波数となるように移相器を調整する。これにより、フィルタの中心周波数を300-500 MHzの間で誤差最大1 MHzで自動設定できるようになった。また、上記の手法により発振停止時の増幅器利得が求まるので、増幅器利得とその制御電圧の関係を予めデータを保存しておくことにより、所望のQとなる様にループ利得を設定できる。これにより、Q<50であれば、中心周波数とともにQも比較的正確に設定できることがわかった。次に、この自動設定機能を利用して、通過域の平坦性並びに肩特性の急峻性に優れた高次フィルタの合成を試みた。具体的には2つの再帰型フィルタに対して、同一Qを与えると共に、その中心周波数に若干差を与え、さらに両フィルタ出力の差分を得ることにより4次のフィルタが合成できる。いくつかの中心周波数に対して同一帯域幅を持つ4次フィルタを合成し、そのデータをマイクロコントローラ内に保存し、それを参照することにより、300-500 MHz帯で動作する可変フィルタを構築することができた。また、このフィルタ構成を用いて、超再生受信機を構成し、スペクトロメータとして利用できることを示した。現在、開発されたこの可変フィルタを利用してソフトウェア無線機を試みている。
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