研究課題/領域番号 |
23656249
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
阪田 史郎 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 教授 (80375609)
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研究分担者 |
関屋 大雄 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 准教授 (20334203)
小室 信喜 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 助教 (70409796)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 無線マルチホップネットワーク / スループット解析 / アドホックネットワーク / ネットワーク / QoS / 自律分散ネットワーク |
研究概要 |
無線マルチホップネットワークは、既存のネットワークインフラを必要としないため、非常時の一時的なネットワーク、無線ホームネットワーク、ITSなどへ利用が期待されている。しかし、複数の端末が自律分散的に動作するため、ネットワーク全体の挙動や特性を解析的に把握することは極めて複雑で困難な問題となる。スループット、平均遅延などのネットワークの諸特性はシミュレータを用いたシミュレーションで評価することが多い。しかし、統計データを得るまで膨大な時間を要するという本質的な欠点がある。一方、「解析」は一旦解が求まれば短時間に結果を把握できる。さらに数式から多くの情報を入手でき、評価に数学的な保証が加わるなど多くの利点を得られる。無線ネットワークの特性解析として、Bianchiによって提案されたマルコフ過程に基づく確率論的解析手法が知られており、この手法に端を発し様々な条件下で深い議論が展開されている。しかし、これら一連の議論はシングルホップを想定したものであり、スループットや遅延特性は複数の端末が同時に送信を開始することに起因するフレーム衝突率に支配される。一方、無線マルチホップネットワークでは、隠れ端末問題に起因するフレームの衝突が支配的であり、その影響を組み込んだ新しい理論の構築が必要である。本研究では無線ネットワークにおいて、ネットワークを構成する「個」の動作がネットワーク「全体」の振る舞いに及ぼす影響をモデル化するという独自の解析アプローチを提唱し、任意のネットワークトポロジや送信負荷を与えたときにネットワーク上のスループット、平均遅延、衝突率などの統計データを解析的に表現することに挑戦する.本研究の成果はネットワークの本質を解析的に明な形で理解することにつながり、今後の無線ネットワークの発展においてブレークスルー技術になりうる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、個の動作を表す解析表現とマルチホップネットワーク全体の振る舞いを関連付けるための解析手法の確立に取り組んだ。そのための具体例として、直線状のマルチホップネットワークにおける片方向通信の最大スループット解析を行った。すべての端末が送信範囲内にあることを想定した時、「個」である各端末の振る舞いはBianchiによって提案されたマルコフ過程で記述される。その振る舞いを結合する表現として、ボトルネックという概念とフロー制限という概念を導入することを提案し、その妥当性を検討した。ボトルネックとは、あるフローの最大スループットを決定するリンクを指し、ボトルネックの最大スループットがネットワークの最大スループットを決定するという性質を解析に導入した。さらに、最大スループットを呈しているネットワークでは、各ノードのフレーム送信数が等しいという特徴を解析に導入した。このふたつのアイディアにより、個々の振る舞いとネットワークの特性を関連付けることに成功し、解析技術確立のための第一歩を提唱することができた。さらに、直線状のマルチホップネットワークにおける双方向通信において、本来独立にどうさすべきはずの隠れ端末同士が相互関係をもって動作している現象を発見した。これは、個の動作がネットワークの挙動を生み出す、という発想を持った時はじめて見出すことができる現象である。この現象をバックオフステージ同期現象と名付け、現象の発生メカニズムについて詳細な検討を行った。さらに、この現象の解析的表現の導出に挑戦した。この解析において、双方向通信に対応する各端末のマルコフモデル、フレーム破棄の影響、隠れ端末問題に起因する衝突率の表現等、様々な解析技術を提案し、解析表現の導出に成功した。その妥当性はシミュレーションのみでなく、実験でも確認することができている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度以降も、引き続き、解析表現の確立を目指し、さらに、ネットワークの最大スループットを解析表現から高速に導出するソフトウェア開発を目指す。まず、前年度同様、直線状のネットワークに着目し、最大スループット発生時以外の状態におけるスループット解析技術の確立を目指す。それは、非飽和時の解析を行うことと等価となる。非飽和時の解析を行うために、あらたにBianchiらによるマルコフモデルを改良することを検討する。これにより、より一般化された状況での解析技術が確立されることになる。また、その改良にともない「個」の振る舞いをネットワーク上に結合する表現方法を確立する。次のステップとして、複数種類のフレームが存在する場合のスループット解析技術の確立に挑戦する。このためには、「個」を表すマルコフ過程の次元を増加させる必要がある。その個の表現を、前年度確立した方法や前フェーズで提案する解析方法で結合し、ネットワーク全体の振る舞いを表現する。この技術が確立すると、音声、データ、動画という3種類のフレームが同時に流れるネットワークにおけるスループット解析が可能となり、IEEE802.11eに基づく、QoSに関する解析的なスループット導出が可能となると考えている。解析表現の次のステップとして、ネットワークトポロジを限定しない解析手法の確立に挑戦する。任意の状態における解析表現を導出することが最終的な目標であるが、現実的な問題として、クロストポロジ、メッシュトポロジ、ツリートポロジなどを対象として、解析のための基礎技術の蓄積を目指す。これらの解析結果は、常にプログラム上で自動的に数式が導出されるよう、ソフトウェア上に展開していく。また、解析結果は常に実験結果と比較することにより、解析表現の妥当性、およびソフトウェアの信頼性を例証していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究の特徴のひとつに実験を行い、解析の妥当性を検証していくことが挙げられる。そこで、実験データを保存するためのストレージサーバを購入する予定である。また、実験補助の謝金として使用する。研究成果の積極的な対外公表を進めていく。そのため、旅費として使用する。具体的には、研究グループとして国内2回、海外1回の発表を計画している。また、論文投稿も積極的に行い、別刷りなどに使用する。
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