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2012 年度 実施状況報告書

個の動作と全体の挙動の関連性に着目した無線ネットワークの解析

研究課題

研究課題/領域番号 23656249
研究機関千葉大学

研究代表者

阪田 史郎  千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 教授 (80375609)

研究分担者 関屋 大雄  千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 准教授 (20334203)
小室 信喜  千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 助教 (70409796)
キーワード無線マルチホップネットワーク / スループット解析 / アドホックネットワーク / ネットワーク / QoS / 自律分散ネットワーク
研究概要

無線マルチホップネットワークは、既存のネットワークインフラを必要としないため、非常時の一時的なネットワーク、無線ホームネットワーク、ITSなどへ利用が期待されている。しかし、複数の端末が自律分散的に動作するため、ネットワーク全体の挙動や特性を解析的に把握することは極めて複雑で困難な問題となる。スループット、平均遅延などのネットワークの諸特性はシミュレータを用いたシミュレーションで評価することが多い。しかし、統計データを得るまで膨大な時間を要するという本質的な欠点がある。一方、「解析」は一旦解が求まれば短時間に結果を把握できる。さらに数式から多くの情報を入手でき、評価に数学的な保証が加わるなど多くの利点を得られる。
無線ネットワークの特性解析として、Bianchiによって提案されたマルコフ過程に基づく確率論的解析手法が知られており、この手法に端を発し様々な条件下で深い議論が展開されている。しかし、これら一連の議論はシングルホップを想定したものであり、スループットや遅延特性は複数の端末が同時に送信を開始することに起因するフレーム衝突率に支配される。一方、無線マルチホップネットワークでは、隠れ端末問題に起因するフレームの衝突が支配的であり、その影響を組み込んだ新しい理論の構築が必要である。
本研究では無線ネットワークにおいて、ネットワークを構成する「個」の動作がネットワーク「全体」の振る舞いに及ぼす影響をモデル化するという独自の解析アプローチを提唱し、任意のネットワークトポロジや送信負荷を与えたときにネットワーク上のスループット、平均遅延、衝突率などの統計データを解析的に表現することに挑戦する.本研究の成果はネットワークの本質を解析的に明な形で理解することにつながり、今後の無線ネットワークの発展においてブレークスルー技術になりうる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成24年度は、個の動作を表す解析表現と通信負荷に依存しないマルチホップネットワーク全体の振る舞いを関連付けるための解析手法の確立に取り組んだ。そのための具体例として、直線状のマルチホップネットワークにおける片方向通信の非飽和、最大、飽和スループット解析、および遅延解析を行った。すべての端末が送信範囲内にあることを想定した時、「個」である各端末の振る舞いはBianchiによって提案されたマルコフ過程で記述される。その振る舞いを結合する表現として、各端末のフレーム保持確率とフロー制限という概念を融合することを提案し、その妥当性を検討した。ボトルネックとは、あるフローの最大スループットを決定するリンクを指し、ボトルネックの最大スループットがネットワークの最大スループットを決定するという性質をもつ。そのボトルネック端末は、すべての端末の中でフレーム保持確率が真っ先に1となる端末と表現される。さらに、隠れ端末による衝突と同時送信による衝突を同時に考慮した解析表現を提案明日。これらのアイディアにより、個々の振る舞いとネットワークの特性を関連付けることに成功し、直線状のマルチホップネットワークにおける片方向通信のモデル化がほぼ完成したといえる。
さらに、QoSを装備するIEEE802.11eをマルチホップネットワークに適用した時の最大スループット解析を行った。IEEE802.13eではAIFSと呼ばれるフレーム送信の差別化を図る時間、および、CWがアクセスカテゴリによって異なることにより送信機会に差を持たせ、QoSを実現する。この特徴をZoneという概念を用いることによって表現することに成功した。ただし、現段階では隠れ端末が存在しない場合についての解析に留まっており、今後さらなる条件の一般化が必要となる。

今後の研究の推進方策

平成25年度も、引き続き、解析表現の確立を目指し、さらに、ネットワークの最大スループットを解析表現から高速に導出するソフトウェア開発を目指す。まず、前年度同様、直線状のネットワークに着目し、IEEE802.11eを適用した場合について、最大スループット発生時以外の状態におけるスループット解析技術の確立を目指す。それは、非飽和時の解析を行うことと等価となる。非飽和時の解析を行うために、あらたにBianchiらによるマルコフモデルとエアタイムと呼ばれる状態平均化の概念を融合することを検討する。また、隠れ端末による衝突が発生するネットワークトポロジに対応できる解析表現に拡張する。これにより、より一般化された状況での解析技術が確立されることになる。また、その改良にともない「個」の振る舞いをネットワーク上に結合する表現方法を確立する。
次のステップとして、直線状トポロジにおける双方向フロー解析を行う。双方向にすることによって、特にネットワークトポロジの両端付近で、不平衡な衝突が発生することが予想される。その現象は直線状ネットワークには生じないた、マルコフモデルにさらなる改善が必要となる。
解析表現の次のステップとして、ネットワークトポロジを限定しない解析手法の確立に挑戦する。任意の状態における解析表現を導出することが最終的な目標であるが、現実的な問題として、クロストポロジ、メッシュトポロジ、ツリートポロジなどを対象として、解析のための基礎技術の蓄積を目指す。
これらの解析結果は、常にプログラム上で自動的に数式が導出されるよう、ソフトウェア上に展開していく。また、解析結果は常に実験結果と比較することにより、解析表現の妥当性、およびソフトウェアの信頼性を例証していく。

次年度の研究費の使用計画

本研究の特徴のひとつに実験を行い、解析の妥当性を検証していくことが挙げられる。そこで、実験データを保存するためのストレージサーバを購入する予定である。また、実験補助の謝金として使用する。
研究成果の積極的な対外公表を進めていく。そのため、旅費として使用する。具体的には、研究グループとして国内2回、海外1回の発表を計画している。また、論文投稿も積極的に行い、別刷りなどに使用する。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (6件) 学会発表 (6件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] MAC Protocol for Ad Hoc Network Using Smart Antenna with Pulse/Tone Exchange2013

    • 著者名/発表者名
      Jing Ma, Hiroo Sekiya, Nobuyoshi Komuro, Shiro Sakata
    • 雑誌名

      The Twelfth International Conference on Networks (ICN 2013)

      巻: - ページ: 1-6

  • [雑誌論文] A directional MAC protocol with the DATA-frame fragmentation and short busy advertisement signal for mitigating the directional hidden node problem2012

    • 著者名/発表者名
      Sho Motegi, Hiroo Sekiya, Jing Ma, Kosuke Sanada, and Shiro Sakata
    • 雑誌名

      IEEE International Symposium on Personal, Indoor and Mobile Radio Communications (PIMRC'12)

      巻: - ページ: pp.409-414

    • DOI

      10.1109/PIMRC.2012.6362817

  • [雑誌論文] An asynchronous multi-channel MAC protocol with Pulse/Tone exchange for RTS collision avoidance2012

    • 著者名/発表者名
      Ryo Manzoku, Hiroo Sekiya, Jing MA, Kosuke Sanada, and Shiro Sakata
    • 雑誌名

      The 1st International Symposium on Telecommunication Technologies (ISTT2012)

      巻: - ページ: 76-81

    • DOI

      10.1109/ISTT.2012.6481569

  • [雑誌論文] Backoff-stage synchronization in three-hop string-topology wireless networks with hidden nodes2012

    • 著者名/発表者名
      Kosuke Sanada, Hiroo Sekiya, Nobuyoshi Komuro, Siro Sakata
    • 雑誌名

      Nonlinear Theory and Its Application(NOLTA), IEICE Journal

      巻: 2 ページ: pp.200-214

    • DOI

      10.1488/nolta.3.200

  • [雑誌論文] MAC protocol for smart-antenna used ad hoc networks with RTS/CTS overhead reduction2012

    • 著者名/発表者名
      Jing Ma, Hiroo Sekiya, Nobuyoshi Komuro, and Shiro Sakata
    • 雑誌名

      Journal of Selected Areas in Telecommunications (JSAT)

      巻: - ページ: 10-19

  • [雑誌論文] MAC protocol for adhoc networks using smart antennas for mitigating hidden and deafness problems2012

    • 著者名/発表者名
      Jing Ma, Hiroo Sekiya, Atsushi Nagasaki,Nobuyoshi Komuro, and Shiro Sakata
    • 雑誌名

      IEICE Transactions on Communications

      巻: 11 ページ: 3545-3555

    • DOI

      10.1587/transcom.E95.B.3545

  • [学会発表] IEEE802.11 マルチホップネットワークにおける理論解析とそこからみえるネットワークのダイナミクス2013

    • 著者名/発表者名
      関屋大雄, 眞田耕輔, 小室信喜, 阪田史郎
    • 学会等名
      2013年 電子情報通信学会総合大会
    • 発表場所
      岐阜大学
    • 年月日
      20130319-20130320
  • [学会発表] DATAフレームフラグメンテーションとSBA信号を用いて指向性隠れ端末問題を軽 減する指向性MACプロトコル2012

    • 著者名/発表者名
      茂木翔, 関屋大雄, 馬ジン, 眞田耕輔, 阪田史郎
    • 学会等名
      電子情報通信学会無線通信システム研究会
    • 発表場所
      愛媛大学
    • 年月日
      20121213-20121214
  • [学会発表] 直線状無線マルチホップネットワークにおける非飽和状態及び最大スループット解析2012

    • 著者名/発表者名
      眞田耕輔, 関屋大雄, 阪田史郎
    • 学会等名
      電子情報通信学会無線通信システム研究会
    • 発表場所
      愛媛大学
    • 年月日
      20121213-20121214
  • [学会発表] Pulse/Tone信号を用いて制御チャネル上のRTSフレーム衝突を軽減するマルチチャネルMACプロトコル2012

    • 著者名/発表者名
      満足亮, 関屋大雄, 馬ジン, 眞田耕輔, 阪田史郎
    • 学会等名
      電子情報通信学会無線通信システム研究会
    • 発表場所
      愛媛大学
    • 年月日
      20121213-20121214
  • [学会発表] Non-saturated and Maximum Throughput Analysis for String Topology Wireless multi-hop Networks2012

    • 著者名/発表者名
      Kosuke Sanada, Hiroo Sekiya, and Shiro Sakata
    • 学会等名
      2012 Korea-Japan Joint Workshop on Complex Communication Science (CCS)
    • 発表場所
      漢陽大学, ソウル
    • 年月日
      20121122-20121123
  • [学会発表] あるマルチホップネットワークに生じるバックオフステージ同期とその考察2012

    • 著者名/発表者名
      眞田 耕輔,関屋 大雄,小室 信喜,阪田 史郎
    • 学会等名
      電子情報通信学会情報ネットワーク科学研究会・複雑コミュニケーションサイエンス研究会 合同ワークショップ
    • 発表場所
      北海道大学
    • 年月日
      20120809-20120810
  • [備考] 千葉大学・阪田・小室研究室

    • URL

      https://sites.google.com/site/sakatakomurolab/

  • [備考] 千葉大学・関屋研究室

    • URL

      http://www.s-lab.nd.chiba-u.jp

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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