本研究では,群知能によって様々な問題の最適化を行うための非線形手法を開発し,スパイキングニューロンによるハードウェ化を目指し,工学的応用へ向けた考察を行うことを目的としている.そのために,決定論的力学系に支配される粒子による群知能最適化手法をスパイキングニューロンで実現するためのモデルを確立して,システム設計への応用例を示すことを目指した.最終年度である本年度はまず,ハードウェア化に適した簡素化された最適化手法を構築した.本システムは前年度までに開発した非同期型の離散時間ニューロンモデルで粒子の動きを制御する機構を本質的に簡略化したものである.カオスダイナミクスを利用した探索動作の実現で確率要素を利用しなくても従来の粒子群による最適化手法と同等以上の性能を発揮できることを示すことに成功した.さらにFPGA等でのシステマティックな実装を容易にするための整数型の決定論的粒子群最適化手法を提案するに至った.この手法は,離散粒子群最適化よりも高速に動作させることを示した.また,確率要素を利用した従来手法を離散化した手法よりも大域探索において高い性能を示すことが明らかになった.本年度前で提案した2つのモデルについては,前年度までに本課題研究の予算で購入したクラスター計算機および数値計算専用機を利用した並列計算によって詳細な性能評価を行い,定量的にその有効性を示すこと成功した.また,安定性の解析に関しては簡素な力学系特徴を利用して非線形力学系の解析手法に基づいた手法で安定性を解析的に示すこと成功した.
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