研究課題/領域番号 |
23656255
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研究機関 | 公立はこだて未来大学 |
研究代表者 |
高橋 信行 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 教授 (70206829)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 動的知識モデル / ゲーム探索木 / ストリームデータ / 拡張カーネル法 / 動画像認識 |
研究概要 |
本研究では,実世界の大規模・多様なデータから知識や法則を自動的に発見・抽出するためには,知識を静的なものとすることは決して有効・効率的なアプローチではない.我々は,大規模実世界のデータから事前情報を必要としない動的な知識の発見・抽出のための動的知識モデルを提案している.動的知識モデルとは,発見・抽出後であっても,外部からのデータが無くなっても自律的にその確度を高めるように知識構造が変化する知識モデルである.本研究では,提案する動的知識モデルの有効性を示すため,このモデルを用いた事前知識を必要としない画像認識法を開発する.ゲーム探索木の探索の概念を知識構造の動的更新に適用するために,局面を評価する評価関数の設計法が重要である.本年度は,取り組む画像処理固有な知識を用いた評価関数の設計法を明らかにするのではなく,動的知識モデルに基づく一般的な評価関数の設計方法を示した.具体的には,下記の(A) と(B) の要求仕様を満たす設計法を提案し,評価した.(A) 評価関数の入力は,スカラー値ではなく,高い汎用性を持つグラフを構造を持ったものとした.特に,実時間での評価を前提しているため,画像としては時間構造を持つデータであるストリームデータを仮定し,データを高次元の特徴空間上へ写像するときに時間相関構造も取り入れた.(B) ノードでの部分シナリオの実行は,データに対する処理となるため,(A) のグラフ構造は,この処理の実行順序に大きく左右される.そのため,特徴空間における内積をデータから直接計算する手段を与えるカーネル法を拡張し,時間構造に関しても内積として評価するために拡張カーネル関数としてストリームカーネルでの評価を提案した.(A)と(B)を評価するために,オーバレイネットワーク上でのリアルタイムストリーミング配信サービスを用いた実験を行い,提案手法が有効であることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の取り組む画像処理固有な知識を用いた評価関数の設計法を明らかにするのではなく,動的知識モデルに基づく一般的な評価関数の設計方法を示したことに関しては,おおむね順調に進展している.一方,事前知識を必要としない画像認識法を開発のためには,実証実験をする必要がある.しかし,この実証実験では動画像処理が必須であるため,膨大な画像データに対する画像処理,統計処理を並列して処理する能力に優れ,かつ長時間安定に動作する計算機環境が必須である.具体的には,シナリオ木の各ノードで,並列的かつ逐次的に動的知識を表現する部分木に対して,画像処理や統計的な情報処理を行う並列処理に優れたプラットホームとしてをGPGPUクラスタを新規に準備する予定であった.実際,本年度の既存GPGPU機で行った予備的な動作実験の結果を踏まえて,本研究専用のプラットホームとしてはGPGPUクラスタを購入することを当初計画していたが,GPGPUクラスタでのソフトウェア開発環境整備のための既存GPGPU機での動作検証に時間を要したため,本研究専用のGPGPUクラスタの要求仕様が確定せず,購入が遅れている.その影響で,本研究専用のGPGPUクラスタでの予備的な実験が行えなかったため,当初研究計画より,現在までの達成度はやや遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
現在,遅れていたGPGPUクラスタの要求仕様が確定したため,次年度にGPGPUクラスタの購入する.GPGPUクラスタ購入後は,当初の研究計画通りにシステムの構築と評価実験を行う予定である.具体的には,前年度に有効性を示した動的知識モデルとシナリオ木,さらにシナリオ木の構成・探索法を用いて,複数のモノクロカメラから同一標的検出システムをGPGPUクラスタ上に構築し,提案する動的知識モデルとそれを応用したアプローチの有効性を示す.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の主な研究費の使用計画としては,GPGPUクラスタの購入ならびに,ソフトウェア年間保守料,研究成果発表のための旅費,実験補助のための謝金を予定している.ただし,GPGPUクラスタの購入時期が1年遅れた以外は,当初の研究計画並びに研究費の使用計画からの大きな変更はない.
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