本研究では,実世界の大規模・多様なデータから知識や法則を自動的に発見・抽出するためには,知識を静的なものとすることは決して有効・効率的なアプローチではない.我々は,大規模実世界のデータから事前情報を必要としない動的な知識の発見・抽出のための動的知識モデルを提案している.動的知識モデルとは,発見・抽出後であっても,外部からのデータが無くなっても自律的にその確度を高めるように知識構造が変化する知識モデルである.本研究では,提案する動的知識モデルの有効性を示すため,このモデルを用いた事前知識を必要としない画像認識法を開発した. 最終年度では,昨年度までに開発した動的知識モデルのための一般的な評価関数の設計法を用いて,ストリームデータを入力とし,さらに画像固有な評価とストリームカーネルによる時間相関構造の評価を考慮した,事前知識を必要としない画像認識法のための評価関数を実装した. 一方,知識発見の過程は,静止画向けに開発した知識構造の動的更新のためのゲーム木を拡張して,ノードが頻繁に生成・消滅する木構造を持つオーバレイネットワーク上でのリアルタイムストリーミング処理として実装した.ただし,この木構造を持つオーバレイネットワーク自体が一種の自律的にその確度を高めるように知識構造であるため,各ノードが実行する部分シナリオの実行結果により,ノードの生成・消滅は非同期的で,かつ予測困難に起こる.最終年度では,集中的にこの部分への対応を行い,評価実験を可能とする二つの動画像からの同一標的検出システムの開発を行った.さらに,このシステムを用いて実験を行い,提案手法が有効であることを示した.また,標的検出のための各ノードが行うリアルタイムストリーミング処理を実現するために,従来の自由視点映像処理を拡張して,非固定カメラ映像内の多数の静止体の被写体の位置推定方法を,本研究では提案した.
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