研究課題/領域番号 |
23656258
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
小尾 高史 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (40280995)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 社会システム / 病診連携 / 個人健康情報 / 社会保障 |
研究概要 |
平成23年度は、まず現在のレセプト請求に代表される医療用ネットワークサービスで利用されている各社のOD-VPNの技術的仕様を調査し、相互接続に必要となる要件である、(1)相互接続に必要な情報を共有できること可能であること、(2)ネットワークドメイン同士で直接VPNを構築できること、(3)プライベートIPアドレスに関する課題の解決のそれぞれについて具体的検討をおこなった。そして、オンデマンドVPNフレームワークにDNS(Domain Name System)で使用されている分散管理構造を適用し、その用法を拡張したフレームワークを考案した。具体的には、異なる事業者が管理するOD-VPNのサービスドメイン、ネットワークドメインにドメイン名をつけ、各事業者が運営する管理機関は配下のネットワークドメインのドメイン名とそのネットワークドメインで利用しているOD-VPNルータのIPアドレスの関係を管理するとともに、ルータ配下の機器にドメイン名から構成される名前=URL(Uniform Resource Locator)を付与する。また、サービスドメインのVPN管理機関のドメイン名とIPアドレスを管理する「rootサーバ」を新たに設置し、名前解決を行う過程で、rootサーバや管理機関が連携し、VPN構築に必要な情報を管理機関同士で共有する。共有した情報を元にVPN構成情報が生成され、管理機関によってVPNルータへその構成情報が設定されるため、設定された情報を元に、VPNルータ同士でIKEプロトコルを用いて通信用暗号鍵を直接ネゴシエートし、IPsec-VPNを構築することが可能となる。また、医療、保健分野などで,次世代OD-VPNを利用する場面を整理し、その結果に基づいて,医療機関内の情報端末などからの利用シーケンスを考察するとともに、次年度の標準化を踏まえ、国外での研究状況などを調査した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、現在利用が開始されている医療機関向VPNを標準的技術へ移行させることを目的とし、異なるサービス事業者が提供するルータ間接続への対応及び、医療機関内に設置された情報端末の認証、端末利用者の認証を利用する次世代医療用ネットワーク基盤の技術的要件をまとめ、日本全国のすべての医療機関などが安心して利用できるネットワークを構築するための基盤技術の確立を目指している。本年度の研究計画である、現在のサービスで利用されている各社のOD-VPNの技術的仕様及び、各仕様における相互接続可能性の調査、医療分野などにおける、次世代OD-VPNを利用場面を整理等は順調に終了しており、その結果に基づいて、異なるサービス事業者が提供するルータ間接続への対応を、標準的技術を応用して実現する方法を提案した。また、提案方法の中で、医療機関間での接続ポリシーの定義方法・合意方法をどのように行うかの検討についても、実施しており、順調に研究が進んでいる状態であると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、平成23年度におこなった研究結果を基盤技術として発展させるために必要な検討をおこなう予定である。具体的には、前年度の研究成果に基づき、次世代OD-VPNの要求仕様の作成、技術要件の整理をおこない、医療機関内部の情報端末に搭載されたTrusted Platform Moduleや医療従事者の保有するICカードなどの情報をOD-VPNルータに登録して、端末及び利用者認証をおこなうための具体的な手法を検討する。また、23年度に購入したネットワーク機器等を利用して、研究成果の一部基本機能を反映させたルータの擬似的実装をおこない、次世代OD-VPNシステムを技術的側面や運用面からの検証、評価作業をおこなう予定である。さらには、開発システムを医療機関等での利用を想定した実験をおこない、医療関連者等の意見を踏まえ、ユーザインターフェースなどの仕様改善をおこなうとともに、ネットワークサービス等提供事業者,医療機関などがシステムを実際に運用する際の課題を検討し、導入・維持コストについての調査・試算等の面からの、実用化に向けた課題を明かにする。並行して、医療機関内外を含めた統一的な保健医療情報ネットワークを構築するための仕様を標準規格としてまとめるための準備をおこなうとともに、上記検討結果を、研究代表者が参加する厚生労働省ネットワーク基盤検討会作業班での検討に反映し、"医療情報システムの安全管理に関するガイドライン"に反映させることを目標とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度初頭から実験で利用する機材の購入時期が平成24年3月頃だったため執行時期が遅れたが、既に平成23年度の経費は全額支出済みである。平成24年度は、平成23年度に購入したネットワーク関連機器を利用して、擬似的な実装を行うことから、物品等の購入は予定していない。システム構築については、研究室に所属する大学院学生等をRAとして雇用し、研究代表者の指示のもとプログラム作成を行う。また、構築したシステムを、第3者に評価してもらう予定であり、そのための謝金等を計上している。研究成果については、国内外の学会で発表を予定しており、そのための旅費、学会参加費などを計上している。
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