所望の特性を有するガラス薄膜を作製するためには、評価、ならびにその結果をプロセス改善のためにフィードバックすることが重要となる。本研究では、直線集束ビーム超音波材料解析(LFB-UMC)システムを用いた漏洩弾性表面波(LSAW)あるいは漏洩擬似縦波(LSSCW)の伝搬特性(音速、減衰)計測により、ガラス薄膜の評価、すなわち薄膜中の不純物、欠陥、ならびに残留歪みの評価の可能性を検討した。ガラス薄膜の不純物、欠陥、残留歪みによる構造の変化を弾性率変化として計測し、バルク基板に対する測定結果を参考にしながら、それらの関係を調べた。 RFイオンビームスパッタリング(RF-IBS)装置により、SiO2薄膜、Ta2O5薄膜、およびSiO2/Ta2O5多層膜を作製した。また、RFスパッタ装置により、基板温度を変えながら、TiO2-SiO2薄膜を作製した。 RF-IBS装置により、2枚のSiO2ガラス基板上に成膜したSiO2/Ta2O5多層膜に対し、LSAW速度の周波数特性を測定することにより、熱処理によるLSAW速度変化を捉えた。また、SiO2とTa2O5の単層膜を作製し、LFB-UMCシステムにより評価した結果、多層膜の熱処理による弾性率、密度、透過率の変化は、主に、Ta2O5膜の特性変化によるものであることを明らかにした。 また、RFスパッタ装置によりSiO2ガラス基板およびTiO2-SiO2ガラス基板上に、異なる基板温度で成膜したTiO2-SiO2膜に対してLFB-UMCシステムにより評価した結果、LSAW速度ならびにLSSCW速度の基板温度依存性を捉えた。
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