申請者らが提案・実証した「ブリルアンダイナミックグレーティング:BDG」、すなわち、ある偏波状態の光によって光ファイバ中に誘起された誘導ブリルアン散乱に伴って発生している超音波回折格子が直交偏波光もブラッグ反射させるという概念を拡張し、誘導ブリルアン散乱を発生させている光波の半分の波長の光が2次ブラッグ回折を受けることの実証に挑戦し、理論的検討とその応用の検討も行うことを目的とする。 まず、BDGと同じ屈折率回折格子である光ファイバグレーティング(FBG)での2次ブラッグ反射特性の測定系を構築し、2次反射の観察に成功した。光ファイバの屈折率分散の理論(セルマイヤーの式)検討から2次回折波長は1次回折波長の半分より約6nm長くなると計算できた。実際に測定した2次回折波長はこの計算値と良く一致した。2次回折のスペクトル幅は1次回折のそれの約1/8であることも見出した。つづいて、強い誘導ブリルアン散乱を起こす実験系を構築してそのスペクトル形状を高SN比にて測定することにも成功した。BDGをFBGで近似した理論解析等により、2次回折はBDG形状が歪を有するときに生じること、1次回折のスペクトル幅は光ファイバ長に反比例することを確認した。FBGでの実験結果を加味して、本実験でのBDGの2次回折スペクトル幅は1~10MHzに過ぎないことを導いた。これらを念頭にBDGの2次回折測定系を構築した。セルマイヤーの式から2次回折は779.1nm付近に生じることを見出し、購入した780μm帯波長可変レーザを1.5MHzずつ波長掃引できるように工夫して実験を進めた。2次回折である可能性を有するスペクトルを779.94nmに見出した。しかし、誘導ブリルアン散乱を起こした時と起こさなかった時での違いを観察しつつ行った実験にて十分な再現性は得られず、2次ブラッグ反射であるとの断定には至っていない。
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