研究課題/領域番号 |
23656262
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
何 祖源 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70322047)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | センシングデバイス / 地球計測 / ファイバレーザ / 偏波維持 / 複屈折 / 歪計測 / 地震研究 |
研究概要 |
本研究では、申請者グループが世界をリードし研究成果を蓄積してきた多点型・分布型光ファイバセンシング技術に基づいて、極狭線幅DBRファイバレーザを用いた新たな能動型光ファイバ歪センサを提案し、0-100Hzの低周波数領域において、1ナノストレインという今までにない超高精度の歪センシング技術の創成を実証する。この技術により、地球計測・地震研究分野に求められている多地点低コストで設置・維持可能な地殻変動観測の手段を提供することができ、地震観測研究、地下大規模空間のモニタリングなどの多分野にも大きく貢献することが期待できる。具体的に、本研究では、2偏波モー発振DBRファイバレーザを構成し、レーザの発振周波数とファイバの複屈折で決められる2偏波モード間のビート周波数との2つのパラメータにより、歪と温度を分離測定し、温度変動の影響を精密に補償する。よって、本研究の目的は、(1)新たな多点化能動型光ファイバ歪センサおよびその温度補償手法を提示する、(2)今まで実現できないナノストレイン歪精度にチャレンジする、(3)地球計測や地震研究に貢献する、ということにある。 本年度は、(1) 偏波維持型DBRファイバレーザの設計、作成と評価、(2) 偏波維持型能動型センサにおける歪と温度の分離測定により、温度変動効果の精密補償、との2つの課題を設定し、シミュレーションならびに実験により実施した。まず、偏波維持型DBRファイバレーザにおける2偏波モード発振の条件を見出して、それぞれのモードに対して、歪感度(歪-発振周波数シフト係数)と歪精度(歪分解能)対レーザ構造(長さ、FBG反射率、Er/Yb添加量)の関係をシミュレーションで確認し、レーザ構造の最適値を確定し、レーザの試作に成功した。また、DBRファイバレーザにおいて、シミュレーションと実験より、歪と温度の分離測定および温度影響の補償効果を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、まず、偏波維持型DBRファイバレーザにおける2偏波モード発振の条件を見出して、それぞれのモードに対して、歪感度(歪-発振周波数シフト係数)と歪精度(歪分解能)対レーザ構造(長さ、FBG反射率、Er/Yb添加量)の関係をシミュレーションで確認し、レーザ構造の最適値を確定した。ファイバレーザの製作は、海外共同研究者中国曁南大学(広州)のOupeng Guan教授の協力を得て実施し、成功している。 また、2偏波モード発信できる偏波維持DBRファイバレーザを用いてセンサを構成する実験を行った。この場合、2偏波モードの発振周波数の中心値(平均値)はFBGのブラッグ波長(と共振器の長さ)で決められるが、2偏波モード間のビート周波数はファイバの複屈折率で決められる。FBGのブラッグ波長とファイバの複屈折率は、それぞれ歪と温度の影響によって変動するが、それぞれ独立したパラメータである。よって、発振周波数とビート周波数から歪と温度を分離測定することができ、温度変動の影響を消去した純粋な歪を測定することができる。本研究では、DBRファイバレーザにおいて、シミュレーションと実験より、歪と温度の分離測定および温度影響の補償効果を確認した。 本年度の研究成果と関連し、英文学会誌論文3篇、国際会議論文5篇、国内学会発表5篇を発表している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、極狭線幅のDFBファイバレーザないしはDBRファイバレーザを用いた新たな能動型の光ファイバ歪センサおよびその温度補償手法を提案し、0-100Hzの低周波数領域において、1ナノストレインという今までにない超高精度の多点化歪センシング技術の創成を実証する。この目的を達成するために、(1) 偏波維持型DFBファイバレーザとDBRファイバレーザの設計、作成と評価、(2) 偏波維持型能動型センサにおける歪と温度の分離測定により、温度変動効果の精密補償、(3) 超高精度能動型多点化歪センサの構成と評価、の3つの課題を設定し、シミュレーションならびに実験により実施する。 24年度は、主に課題(3)に集中して進める。(3) 超高精度能動型多点化歪センサの構成と評価 (何、徳永、劉(ポスドク研究員)で担当) センサの多点化を実証するために、3つの異なった発振波長を有する能動型センサを設ける。能動型センサからの光は、光可変フィルタを通して、発振波長によってセンサを特定する。選択されたセンサからの光を2分岐し、片方を偏光子を通過させ、直接光検出器で検出した後、2偏波モードのビート周波数を周波数カウンタで測定する。もう片方は、偏波スイッチで1偏波モードの光を選択し、波長計でその発振周波数を測定する。最後に、ビート周波数と発振周波数から、温度変動の影響を除去した歪を求める。このセンサシステムの性能を評価するために、熱膨張率が岩盤に近い石英材料を用いてセンサをパッケージングし、その後、精密な歪と温度制御装置を用いて、歪と温度の感度、精度、および温度変動の影響の除去効果を評価する。また、DBRタイプとDFBタイプの比較も行う。 上記の3つの具体的な研究計画を実施し、予測している性能を実現することで、新たな能動型多点化光ファイバ歪センサの構成およびその温度補償手法が確認できる。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品費 70万 偏波維持ファイバ、偏波維持型Er/Yb 共添加ファイバ、偏波維持型光学部品(光ファイバカプラ、光アイソレータ、ポラライザ等)旅費 30万 海外旅費、国内旅費謝金等 20万 研究補助業務謝金等その他 10万 研究成果投稿料
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