研究課題/領域番号 |
23656270
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
杉江 俊治 京都大学, 情報学研究科, 教授 (80171148)
|
研究分担者 |
東 俊一 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (40420400)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 量子化出力 / 粒子フィルタ / 確率的制御器 / 線形近似モデル / 走化性システム |
研究概要 |
本研究では,低解像度の出力情報や大幅に情報圧縮された状態観測値などの不完全観測情報しか利用できないシステムを対象とし,所期の機能・精度を達成する高性能な制御系の設計法を確立することを目的としており,初年度については以下の2項目について,研究を進めた.(1) 量子化出力データ下での確率的最適化を基礎とした制御系設計データの情報不足を補う基礎は対象システムの精密なモデル化である.バックラッシュ等の現実的な非線形制約を考慮した上で,入出力データに基づき粒子フィルタを適用した同定について考察し,基礎的な結果を得た. また線形近似モデルの精度について考察した.一方, 量子化出力に基づく元信号の高精度再構成についても,現時刻の出力を推定する手法について考察し,各サンプリング時刻において滑らかな関数で出力履歴を近似し,これとオブザーバを併用して元信号を再構成する方法の有効性について検討した.(2) 不完全観測情報下における確率的制御器の解析と制御確率的制御器を持つ例として,大腸菌とゾウリムシの走化性システムを採り上げ考察を行った.まず,これらのシステムの性能規範として,(τ,ε)-収束性とr-不変性という概念を新たに導入し,これらによって確率的制御器を含むシステムの性能をうまく捉えられることを明らかにした.これをもとに,実際に,大腸菌とゾウリムシに組み込まれている確率的制御器の性能解析を行い,大域的性能は大腸菌の方が優れている一方で,局所的性能はゾウリムシの方が優れていることを明らかにした.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進展している.対象システムの精密なモデル化に関しては、粒子フィルタを適用した同定についていくつかの結果を得ており、特に、線形近似モデルの精度については論文として発表している。また、 量子化出力に基づく元信号の高精度再構成についても、解像度の低い位置検出信号から速度信号を高精度に再構成する手法について、成果をまとめており、論文として発表予定である。不完全観測情報下における確率的制御器の解析と制御に関しても、生物システムの制御器のモデル化を通じて、解析的な結果を得ている。
|
今後の研究の推進方策 |
より広いクラスのシステムを記述できるマルチモデル等の同定を含め,不完全情報を補うモデルの精緻化について検討を進める.また,確率的制御器に関しては,H23年度は,ケーススタディを基に検討を行ったが,ここで得られた成果をより一般的なシステムへ拡張していく.
|
次年度の研究費の使用計画 |
本研究成果に関する討議と情報収集のために国際会議に出席するための,海外出張旅費計70万円.成果報告および情報収集のための国内出張旅費15万円.および参加費,書籍費等その他の費用15万円.
|