研究概要 |
現実の制御機構においては,価格的な制約から低解像度のセンサを使用せざるを得ない場合も多いが,そのような不完全観測情報の下においても,高精度な制御を実現する手法が産業界から求められている.一方,制御理論の分野においても,量子化された信号を含む制御系の解析や設計に関する理論が国内外で急速に発展してきている.しかし,そこでは,不完全観測情報だけしか得られない場合については,安定性以外 の成果はほとんど得られていない.そこで本研究では,量子化された(低解像度の)出力情報や大幅に情報圧縮された状態観測値などの不完全観測情報しか 利用できないシステムを対象とし,所期の機能・精度を達成する高性能な制御系の設計法を確立することを目指した. 昨年度までに得られた主な成果は(1)低解像度センサによる不完全観測情報の粒子フィルタおよび信号補間による復元(2)生物が自然界で行っている不完全観測情報の復元に関する原理抽出であるが,本年度は,最終年度として,これらの成果の総括を行い,不完全観測情報の復元の一般的なメカニズムの解明を試みた.その結果,フィードバック制御に目的を限定した場合には,(一部例外はあるが)一般的には不完全観測情報の復元には,フィードバック系の一部に確率的な振る舞いを人為的に付加することが有効であるとの結論を得た.実際,この帰結は,粒子フィルタが(確定的なシステムに対しても)確率的な振る舞いを導入したフィルタであること,また,多くの生物に確率的な制御器が組み込まれていること,からも妥当なものであると考えられる.
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