研究概要 |
オプティカルフローとは, 画像中の物体の移動量を表すベクトルのことである. これまで, 画像中の1点に対して物体の並進運動だけでなく, 回転・拡大も同時推定する方法を提案してきた. 平成23年度には, 稠密推定と呼ばれる領域内のすべてのピクセルに対してオプティカルフロー推定を行う方法に拡張した. この際, 動的システムとしての可観測性が成立するように,推定するフローの解像度を下げて推定を行うことを提案した.しかし,平成23年に提案した方法では,解像度は原画像の 1/2 の解像度に固定していた.今年度は,この解像度を下げる割合を 1/2 よりさらに下げることを提案し,この解像度の低減によって本手法の欠点の一つである計算量の問題を低減することを検討した.カルマンフィルタの推定計算における計算量が状態のほぼ 3 乗に比例し, 解像度の 6 乗に比例することから, 解像度を下げ推定すべき状態数を減らすことは計算量削減に大きなメリットとなるはずである.実際に数値実験により, ほぼ理論通りの計算量低減が実現でき,かつ,推定精度の劣化もほとんどないことが確認できた.本成果については,次年度以降に学会発表を行う予定である. 今年度は,推定値の時間更新においてモデルによる予測値と実測値の違いである観測残差を評価し,物体の境界も同時に推定する方法の実現についても研究を行った.フローの境界が推定できる可能性については数値実験によって確認した. しかし,境界の推定をオプティカルフローの推定自体に再利用し,フロー推定値の高精度化を行う点についてはあまり進捗がなかった.この点については次年度以降も引き続き研究を行う予定である. また, は並列処理などの高速化の検討も引き続き行う予定である.
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