本年度は本研究に関して主に3つの成果を得ることができた.一つ目は,周波数点上でのロバスト安定条件に基づく最適化を用いたPID制御の設計であり,ノンパラメトリックモデルであるスペクトルモデルに基づくロバスト制御系の設計方法の提案である.これは通常の伝達関数を用いた数式モデルを基にした設計法では凸最適化問題とはならないものが,スペクトルモデルに基づき各周波数点での条件にすることにより凸最適化問題となることを示すものであり,計算力を前提とした新しい制御系設計論への発展の可能性を持つものである.二つ目は,出力の値によってフィードバックゲインを切り替える制御系の設計方法の提案である.ここで注目するのは,最適な切り替え点を求める問題であり,これをハイブリッドシステムの予測制御問題に帰着し,混合整数計画問題として数値最適化により解を得られることを示した.そして数値例を用いて,得れらた制御器により,応答が早くオーバーシュートがないという相対する二つの要求を満たすような応答を得ることを可能であることを示した.三つ目は,入力飽和系に対する新しいアンチワインドアップ型予測制御設計法の提案である.通常のアンチワインドアップ制御は入力が飽和にかかったときに始めて働くため応答が遅れてしまうが,予測制御の概念を入れることにより,フィードフォーワードでアンチワンドアップ入力を入れることにより応答が遅くならない制御系を設計ができるようになった.この制御問題もハイブリッドシステムの予測制御問題に帰着することにより,混合整数計画問題として数値的に解を求めることができる.
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