研究課題/領域番号 |
23656275
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
小木 美恵子 金沢工業大学, バイオ・化学部, 教授 (50410288)
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研究分担者 |
得永 嘉昭 金沢工業大学, 工学部, 教授 (00072174)
内田 恵理子 国立医薬品食品衛生研究所, 遺伝子細胞医薬部, 室長 (80176685)
會澤 康治 金沢工業大学, 工学部, 教授 (40222450)
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キーワード | 応力波 / 遺伝子導入 |
研究概要 |
本課題は3年間であり,新規遺伝子導入法としてNd:YAGレーザ誘起応力波laser induced stress wave:LISW)を用いた遺伝子導入を開発する。本年度は2年目にあたる。LISWを用いた遺伝子導入の最適化条件を決定し,特定の細胞を標的として核酸を安全に,かつ効率良く導入する方法を開発し,安定した遺伝子導入法の確立を目指した。 1)LISWが細胞に及ぼすメカニズムを物理学的に検証した。 厚さ0.5mmの黒色ゴムをターゲットにしてターゲット表面で起こっている物理現象をacoustic signatureから検討した。Confined型ターゲットでは,ターゲット表面付近のプラズマが接着層内に閉じ込められるため,0.4J/cm2程度の低いレーザフルエンスでもプラズマ膨張によるパルス応力波が発生することがわかった。ガラスベースディッシュ内では,応力波の衝撃によって内側から外側にかけて細胞の接着率が高くなり,中心部の剥がれ率が高くなった。FITCデキストランを用いた細胞への取り込みは,ディッシュ中心部が高くなった。これらの検討から,応力波の圧力値がディッシュ内で不均一であり,その圧力分布が細胞の接着及び外来物質の導入効率に影響を及ぼしていると考えられた。 2)エチレンプロピレン(EP)ゴムを新たに応力波発生素子として開発した。 0.07mmEPゴムを用い,0.7J/cm2のレーザフルエンスで発生させた応力波による圧力値はディッシュ中央部で約30MPaになり,ディッシュの周辺部では約10MPaとなった。FITCデキストランの取り込みはその圧力分布に対応していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度から研究分担者として會澤康治先生が加わり,LISWの発生素子の開発と発生理論を明らかにすることができた。 ①黒色ゴムの厚みがacoustic signatureに与えることを明らかにして,Confined型発生素子によるLISWにおけるインパルス成分の制御を可能にした。 ②LISWの発生素子として,これまで知られていた黒色ゴムではなくエチレンプロピレン(EP)ゴムを用いることにより,黒色ゴムよりも4~5倍大きい最大ピーク電圧のacoustic signatureを得ることに成功した。このエチレンプロピレン(EP)ゴムによる発生素子を用いて,外来物質の取り込みおよび遺伝子導入を行い,FITCデキストランがとりこまれるためには,一定のエネルギーが必要である・ビーム径が大きいほど,効率が良い (2.3mm<4.5mm)ことを明らかにした。HeLa細胞ではレーザフルエンス0.7J/cm2,レーザビーム径4.5mmでは,シャーレ全体のFITCデキストランの取り込み率は30%近くまで向上し,シャーレのビーム径に相当する区画では取り込み率が80%以上になるところも観察された。
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今後の研究の推進方策 |
①LISWを用いてヒト正常線維芽細胞に対して遺伝子導入を行い,最適条件を決定する。ヒト正常線維芽細胞を用いることにより,LISWを用いたiPS細胞の樹立が可能になり,その研究応用の範囲が広がる可能性が考えられる。 ②LISWが細胞に及ぼす遺伝学影響をヒト正常線維芽細胞を用いて解析する。解析手法として,染色体数,G-band分染法による核型解析を行う。ヒト正常線維芽細胞を用いることにより①と同様に安全なiPS細胞の樹立に結びつく。
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次年度の研究費の使用計画 |
①HeLa細胞を対象に遺伝子導入効率を向上させる改善を重ねる。これまではHeLa細胞の接着面からレーザを照射していたが,細胞接着面を上下逆にしてレーザを照射することにより,より高い生存率と導入効率を実現する。ガラスベースディッシュ等消耗品が必要 ②接着因子の免疫染色解析のため、接着タンパク質の抗体が必要 ③論文投稿費
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