鉄筋コンクリート構造物の長寿命化で最も問題となるのは、塩素による鉄筋の腐食である。コンクリート中に塩素イオンなどが存在すると鉄の不動態化作用が阻害され、鉄の腐食が進行しやすい状態になる。本研究では、静電的遮断効果によってコンクリート中での塩素の侵食を防ぎ、超長寿命化鉄筋コンクリートを実現することを構想した。安定的に帯電化した微粒子をコンクリートに混和し、静電的遮蔽構造をコンクリート内部に作成することで、塩素イオンの内部侵入を静電的に防ぐことを狙う。よって本研究では、帯電状態を安定的に維持できる無機系微粒子をセメント材料から作成し、その帯電化の鉱物学的メカニズムを明らかにすることを目的とした。 セメントを分極固化させることにより、帯電化微粒子を創製することに成功した。得られた分極固化体の電位差を1~12 mVまで増加させることが出来たが、目標とした電位差(100 mV)には至らなかった。電極部周辺の接触性が悪化することに原因があり、今後の課題として残った。なお、得られた電位差は、分極固化から少なくとも72時間安定しして保たれることを確かめた。 分極固化後の負電荷固化部と陽電荷固化部を微粉化し、XRD分析に供して鉱物組成を調べた。陽電荷固化部では金属鉄が見出された。しかし、それ以外に顕著な鉱物組成変化は見出されなかった。帯電化に関与する鉱物を特定することが本研究の目標の一つであったが、明確な特定には至らず、今後の課題として残った。
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