研究課題/領域番号 |
23656288
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
五十嵐 晃 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80263101)
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キーワード | 実時間シミュレーション / 並列演算 / 論理回路 / 時刻歴応答解析 / 高速演算 |
研究概要 |
前年度の成果を基に,FPGAベースの実時間ハイブリッドシミュレーションシステムを構築する上で実装に必要な要素技術とその適用法の検討を行った。本システムでは,実験部分において逐次得られる計測値に基づき計算対象の構造モデルの運動方程式の時間積分を実行し,実験装置用の信号を出力する機能が基本となる。実時間性を確保するためには, a. 計測信号の取り込み b. 同じ時間刻みΔtの数値計算の1ステップの処理 c. 計算結果に基づく載荷装置の制御信号の出力,の3つのプロセスを数値時間積分の時間刻みΔt以内の時間で完了する必要がある.そこで,地震応答計算の機能については,Operator Splitting法による時間積分のアルゴリズムを,数値演算処理回路を状態遷移に基づく有限オートマトンとして構成することで実装した.高速処理のための同時並列演算の制御と,数値計算精度を確保するための浮動小数点数形式による演算を採用した.外部信号の入出力の機能については,FPGAボードに搭載されているオーディオ・コーデック(WM8731,Wolfson社)を外部インターフェースとして利用し,アナログ電圧信号と24bitリニアPCM形式で符号化されたデジタル信号の間の変換を入力,出力各々2チャンネルについて行い,入力は地震動加速度信号と,実験部分からの計測荷重信号に,出力は実験装置の変位制御信号およびモニタ用信号に用いることができるものとした.FPGAにおいては,上述の浮動小数点数とリニアPCM形式の間の変換を介して,地震応答計算機能に接続される.さらに,実時間性の制御のため,供給される基本クロック信号 (18.432MHz) および複数の分周クロック信号を用いて,運動方程式の時間積分演算およびオーディオ・コーデックによる入出力信号の時間制御を行うシステムを構成できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実時間ハイブリッドシミュレーションのシステムをFPGAで実現するための論理回路を設計し、その論理動作を確認するとともに、その実験制御システムとしての実装に必要な外部インターフェースの確立を確認することができたとともに,実時間高速並列応答計算の結果を用いて外部実験装置の制御に必要な信号の生成が実現可能であることを示したことから、基本的な目標の達成に至ったと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の成果を踏まえて、実時間応答シミュレーションとそれを用いた実験制御処理システムとしての実現可能性を、実験装置と組み合わせたハイブリッドシミュレーションシステムとして適用し、最低限の試行的実験が行える実験システムの試作や予備的な実験の実施、実験システムとしての性能の確認を行うことを目標とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
実時間応答シミュレーションと載荷装置と組み合わせたハイブリッドシミュレーションシステムとして実現するためのハードウェアの整備のための物品費、システム整備および実験実施のための補助者の謝金、情報収集および成果発表のための旅費などを研究費として計上し使用する計画である。
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