研究概要 |
FPGAベースによる自由度数の大きな構造システムの数値モデルの実時間ハイブリッドシミュレーションシステムを構築する上で実装に必要な要素技術とその適用法の検討を行った。本システムでは、実験部分において逐次得られる計測値に基づき計算対象の構造モデルの運動方程式の時間積分を実行し、実験装置用の信号を出力する機能を基本とし、実時間性を確保するためにa. 計測信号の取り込み b. 数値計算の1ステップの処理 c. 載荷装置の制御信号の出力,の3つのプロセスを時間刻み以内で完了するようなシステムを構成する必要がある。そこで、同時並列演算と数値計算精度を確保するための浮動小数点数形式による時間積分の数値演算処理回路を、状態遷移に基づく有限オートマトンとして構成した論理回路を設計した。外部信号の入出力の機能についてはオーディオ・コーデックを用い、アナログ電圧信号、24bitリニアPCM形式デジタル信号、浮動小数点数形式の間の変換により情報を扱うシステムとした。また、動的載荷装置特有の入力信号に対する載荷の時間遅れなどの動特性の補償の機能については、想定される載荷装置の遅れ時間後の載荷加振目標値を外挿式を用いて予測する手法を用いることとし、加算器と乗算器の組み合わせにより実現できることを確認した。 現実的な演算速度と実装可能自由度数を得るための演算数および並列化を考慮したFPGAの計算処理能力限界の検討を行った。ロジックエレメント数544,880個で演算を1kHzで行う場合、非線形多自由度モデルの場合1,600自由度程度まで、密行列モデルの場合、100自由度程度まで現実的に対応できることを明らかにしている。 以上の結果に基づき、論理回路をFPGAに実装したシステムと動的載荷装置を組み合わせることにより、実時間ハイブリッドシミュレーションの適用範囲の拡大の実現が可能であることを実証的に示した。
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