研究課題/領域番号 |
23656291
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
木村 吉郎 東京理科大学, 理工学部, 教授 (50242003)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 風車 / 対風応答 / 運動解析 / 現地観測 / ブレード / 風工学 |
研究概要 |
強風時の大型風車のブレード(羽根)の破損被害を防ぐには,強風時や,複雑地形中に設置された場合の複雑気流中における,ブレードの応答特性を明確に把握し,それに基づく耐風設計手法を確立することが必要である.そのため,発電用大型風車のブレード(羽根)の稼働時の対風応答を,簡易かつ精度良く把握する測定手法を確立することが本研究の目的である.測定には,ブレードの先端を2台の高速度カメラで撮影した動画に対する3次元運動解析を用いる. 本年度は,屋内実験において1枚のブレードを単純化したアクリル板をモータに取り付け,その回転時の先端の運動を,3次元運動解析ソフトを用いて精度良く測定する手法の確立を目的とした.測定には,3次元運動解析ソフトウェアのDIPP-Motion Pro((株)ディテクト製)を購入して使用した.確実に追尾を行うため,ブレード模型の回転速度は基本的には2rpmと遅くした状態で測定した.画像の撮影には高速度カメラを用い,フレーム数は500fpsとした. 3次元運動解析の際には,まず,既知の寸法をもつ直方体の辺のフレーム構造であるキャリブレーションスケールを設置し,それを2台のカメラで撮影し,その頂点の位置を入力することにより,画像データと変位のキャリブレーションを行う.ブレードの対風応答により生じる振動は主流方向が支配的となるため,その方向の振動を良く捉えられるような,キャリブレーションスケールとカメラの設置位置を種々検討し,明らかにした.また,測定対象としたブレード模型の先端の追尾は,適切な照明を行うことにより概ね可能であることがわかった. 屋内実験において3次元運動解析によって測定されたブレード模型先端の主流方向変位は,ひずみゲージを用いて同時に測定した値と概ね対応しており,本手法の適用性が明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
屋内実験での検討に時間がかかり,当初計画していた,模型風車ブレードを用いた屋外での測定に基づく検討は実施することができていない点においてやや遅れている.平成24年度の早い時期にそうした検討を実施することとしており,実風車を対象とした測定を実施し,結果を分析する計画には支障することなく,概ね計画どおり研究を進めることができると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
まず,屋内実験で得られた最適なカメラとキャリブレーションスケールの設置位置を適用して,屋外において模型ブレードの振動の測定を行う.新たな問題点などが生じた場合には対応し,続いて,実風車を対象とした測定を実施し,測定手法を確立するとともに,得られたデータを分析して,ブレードの高次モードまでの振動がどのように捉えられるかを明らかにする. 実風車を対象とした場合のカメラの設置位置は,模型風車に対する検討で得られた最適な位置を基本とするが,画角の違いにより,最適な位置が異なる可能性もあるため,数ケースは位置を変えて測定を繰り返し,その影響を検討する.キャリブレーションスケールの設置位置および設置方法についても検討し,精度良く,かつ比較的容易に設置できる方法を確立する.測定を繰り返し,天候や風車の向き,時刻などの条件により,測定の安定性やノイズ等がどのように影響を受けるか明らかにする.これらの条件の違いにより,最適なカメラの設置位置や設定パラメータも異なる可能性があるため,それについても検討する. こうして測定されたデータは,ブレード先端位置の時刻歴である.そのうちの主流方向座標に対して,振動モード毎の周波数成分に分解し,振動モード毎の応答の時刻歴を求める.風速や風向と,応答の特性にどのような関係があるか,得られた結果を検討し,明らかにする.
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次年度の研究費の使用計画 |
実風車を対象とした測定は,富津市の工場敷地内にあるプロトタイプ風車を対象として実施する予定であり,そのための旅費に使用する.また,スケールを高い位置に設置して,キャリブレーションを実施する必要があり,そのための作業にも費用がかかると考えている.さらに実風車を対象とした測定では,2台のカメラ間の距離を50 m程度離して設置する必要があり,そのためのケーブルや,異なる画角での撮影が必要な場合にはカメラのレンズを購入する予定である.
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