強風時や疲労による発電用風車のブレード(羽根)の破損被害を防ぐには,強風時や,複雑地形中に設置された場合の複雑気流中における,ブレードの応答特性を明確に把握し,それに基づく耐風設計手法を確立することが必要である.そのため,実風車のブレードの稼働時の対風応答を,簡易かつ精度良く把握する測定手法を確立することが本研究の目的である.測定には,ブレードの先端を2台の高速度カメラで撮影した動画に対する3次元運動解析(ソフトウェアはDIPP-Motion Pro((株)ディテクト製))を用いた. まず,1枚のブレードを単純化した模型を用いた屋内実験において,その回転時の先端の運動を,3次元運動解析ソフトを用いて精度良く測定する手法を検討し,適用性を明らかにした. 続いて,運転中の実風車のブレード先端の,風向方向の変位を測定した.キャリブレーションスケールを実風車の位置には設置できないので,測定時とキャリブレーション時で,相似関係を満たすようにカメラを測量によって精度良く設置するとともに,3次元解析ソフトで得られるデータを適切に座標変換し,風向方向の変位を得る必要があった.得られたブレード先端の風向方向変位は,追尾の精度の問題などから不連続が生じている場合もあり,必ずしも十分な精度が得られているとは言えないが,1次の固有振動数に対応すると考えられる,ブレードの振動特性をある程度把握することができた. 本研究により,実風車ブレードの振動を簡易に把握する手法を概ね確立することができたと考えている.しかし,カメラの画角と設置位置の関係で,ブレード1周のうち1/4程度の部分しか計測ができていないこと,座標変換を合理的に行える手法の開発が望ましいこと,といった課題も残されており,引き続き検討するとともに,別途応答解析を実施することにより,ブレードの応答予測手法の確立に向けて検討を続けたい.
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