研究課題
橋梁の地震後の修復性を確保するため,主構造は出来るだけ健全な状態に保ち,複数回の大地震に耐え,高いエネルギー吸収・消散能力を持つ制震ダンパーを構造物内に設置し,それに塑性変形を集中させる制震構造化に注目する.さらに,地震後の残留変形の自己修復(Self-centering)機能を持つ高性能な制震ダンパーの開発のために,(1)形状記憶合金を使用し,材料的な自己修復機能を持たせたダンパー(SMAダンパー),および(2)座屈拘束ブレース(BRB)と高強度ケーブルを効率的に組み合わせて構造的に自己修復機能を持たせた制震ダンパー(SCBRBダンパー)を開発する.SMAダンパーの開発研究では,まずTi-Ni合金SMA線材を対象に,既往の実験結果を模擬する新たな構成則を開発した.次に,複数のSMA線材束を用いて引張ー圧縮載荷ともに有効に働くシリンダー型ダンパーを開発した.このダンパーを門型鋼製橋脚に設置し,従来型のBRBダンパーのみを設置した場合に比較して,残留変形が格段に減少することを実証した.さらに,SMAは温度変化に対して敏感であることに鑑み,地震動によって発生する温度変化,および環境的な温度変化の両方の影響を検討した.その結果,前者については影響は限定的であるという結果を得たが,後者については,慎重に検討する必要があるという結論を得た.SCBRBダンパーでは,BRBに主構造およびプレストレスされた高強度ケーブルの復元性を効率的に組み合わせて構造的に自己修復機能を持つ制震ダンパーを試作した.エネルギー吸収機能をBRBあるいは座屈拘束波形鋼板(BRRP)に持たせ,センターリング機能を弾性域に留まらせた主構造と高強度鋼ケーブルに持たせる,機能分散型の制震ダンパーである.一部は構成則の開発を終え,SCBRBおよびSCBRRPについては現在実験の準備中である.
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Frontiers of Structural and Civil Engineering
巻: Vol.6, No.4 ページ: 294-301