本研究では,低炭素社会および循環型社会の形成を目的として,製鋼スラグのCO2固定化特性を調査し,CO2固定化メカニズムの推察および固定化量の評価を行うものである.CO2固定化特性を調べるために,一定流量通気型CO2固定化試験を実施した.その結果,大気圧下において,初期濃度が4500mg/LのCO2を0.05 mg/Lで供試体に通気した場合において,エージング製鋼スラグは0.03 g-CO2/g-slagのCO2を固定した.また,未エージング製鋼スラグは0.04 g-CO2/g-slagのCO2を固定した.これらのCO2固定化量は,それぞれの製鋼スラグの持つ水溶性カルシウムの約20%に値した.これより,カルシウムの溶出量からCO2固定化量を予測する方法を示した. また,CO2固定化メカニズムの推察について,X線回折および炭酸塩含有量試験によって推察した.その結果,固定化されたCO2は,ほぼ全量が炭酸カルシウムとして存在していることが明らかとなった.また,アベイラビリティ試験によって得られたCa溶出量に基づいたCO2固定化量の評価を行った.これより,本研究のCO2固定化試験では,エージング製鋼スラグおよび未エージング製鋼スラグは,それぞれのもつCa量の約23%および約20%に値するCO2を固定することが分かった. 以上のような研究成果から,CO2固定化特性を有する製鋼スラグを有効利用していくことで,温室効果ガスの削減および循環型社会の形成に寄与することが可能であると考えられる.
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