研究課題
我が国では鉱床や海成堆積物など自然起源で重金属を含有していたり,パイライト鉱物などを含有するため空気に触れると酸化して硫酸を生成しうる土砂や岩石が広く存在する。このような土砂や岩石は,掘削時に酸性水を生じたり重金属が環境基準を超えて溶出し,「自然由来汚染土」として取り扱われるが,これらをそのまま直接活用する対策法を科学的に検討し,昨今実施されている対策手法の妥当性についても検討するものである。最終年度に当たる平成24年度は,(1)ジオシンセティッククレイライナー(GCL)の重金属吸着能に及ぼす共存物質の影響,(2)酸性を呈する土砂とベントナイトを混合した場合の遮水性能,について実験的に検討を行った。その結果,流入水中の砒素のGCL内部への吸着には,鉄等の他の共存物質の影響が大きく,共存する被吸着物質に二次的に吸着する形態を示すことが明らかとなった。また,酸性を呈する土砂をベントナイト混合土の母材に用いた場合,ベントナイトの水和膨潤が阻害されるため,中性域の一般的な土砂を母材とする場合と比較して遮水性能が低下することが明らかとなった。これらを踏まえ,平成23~24年度の研究期間を通じ,(1)GCL内部のベントナイトが十分に水和膨潤できる条件であればGCLは高い遮水性能を発揮しうる,(2)浸出水中に複数種の金属類が存在している場合,GCLは遮水工として高い金属類緩衝能を保持しうる,(3)砒素は他の金属類に追随する形態で吸着される,(4)酸性土を母材とするベントナイト混合土はその後の遮水性能が低下する可能性がある,といった事象を科学的に明らかにした。本研究で得られた知見は,自然由来汚染土の合理的な対策実現の一助となるものであり,適切でかつ低コストな処理に貢献するものと期待できる。
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