研究課題/領域番号 |
23656300
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
日野 剛徳 佐賀大学, 低平地沿岸海域研究センター, 教授 (20295033)
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研究分担者 |
柴 錦春 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20284614)
加 瑞 佐賀大学, 低平地沿岸海域研究センター, 研究機関研究員 (60598845)
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キーワード | 地球温暖化 / 地盤環境 / 海成粘土 / 土構造 / 構成式 |
研究概要 |
本研究では、迫り来る地球温暖化が地盤環境に及ぼす影響の予測と対策の一環として、 地層の累重に伴う地盤の形成過程において、海成粘土中の間隙は上載荷重の増加に伴い減少の一途をたどるとの地盤工学的通説に反する仮説の立証にチャレンジしている。つまり、海成粘土中の間隙は原初環境から2次的な地盤環境の変化を伴う過程でむしろ変わらないか増加する。結果として高鋭敏性・高圧縮性が生じ、地表面における種々の構造物に対して深刻な沈下・変形問題を生じせしめる。このような大胆な仮説を立てて立証を試みるものである。 これまでの研究から、今日の海成有明粘性土に認められる高鋭敏性・高圧縮性の発達メカニズムは、単に塩分溶脱現象に伴う撹乱挙動の変遷のみでは説明不足であることを指摘した。つまり、塩分溶脱現象に伴うセメンテーションの発達に関する視点が欠かせず、例えれば人間の病状でいう骨粗鬆症であって、これらの現象下で同粘性土中の間隙が保たれるか、場合によっては増加するとの具体的な研究イメージの確立に至った。 上記のイメージのシンプル化を目論み、端緒もつかむために、市販のカオリン粘土にシリカとカルシウムを所定の量添加し、これに伴う初期強度発現と微視的土構造の関係を捉えることを試みた。 得られた結果として、:1)粘性土の初期強度発現においてはシリカが支配的といえ、かつシリカとカルシウムの反応には最適値が存在する可能性がある;2)粘性土の初期強度発現が著しいのは間隙のトータル量の変化のみならず、間隙径分布の変化も関与していると考えられる、などのことがわかってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
粘性土中の間隙が保たれるメカニズムには、著しい間隙ピークの遷移を伴うシリカやカルシウムによるセメンテーション効果が示唆され、未変化の場合それらの物質はセメンテーション化しないまま間隙中に取り残されていることが示唆される、などのことがわかってきた。このような知見が得られたことは、本研究において最終的な実験手法として考えている海成粘土中の塩濃度のコントロールに加え、新たに貝化石および珪藻遺骸等の無定形シリカをコントロールするとの同実験手法の根拠の明確さを増すものであることから、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は総括の年度であり、新たな土構造および構成則に関する知見を公表し、地球温暖化に伴う高潮位変動環境下に曝される国々の海成粘土地盤に対して研究の先導的役割を担うとともに、海成粘土地盤において地盤劣化を伴う各種構造物の施工・維持管理・補強技術に関する研究への展開を図る。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度まで実施してきた次の各項目について一部実験の継続を図るとともに、成果公表のための旅費や論文投稿料としての使用に供する。 1)PMA・XRD・間隙径分布の測定、電子顕微鏡観察。 2)貝化石・珪藻遺骸添加・混合による粘性土試料の再圧密過程モニタリングおよび同試料の定ひずみ速度圧密試験および段階載荷型圧密試験の実施。
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