研究課題/領域番号 |
23656305
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山口 弘誠 京都大学, 生存基盤科学研究ユニット, 特定研究員 (90551383)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 水文気象 / 自然災害 / 偏波レーダー / ゲリラ豪雨 |
研究概要 |
ゲリラ豪雨災害では、地上での降水に先行して大気上空に存在する積乱雲の"タマゴ"の早期探知が至極大切であるが、そのタマゴが豪雨をもたらす積乱雲へ成長するかどうかの判断に関して、以下の観測情報や数値予報情報を用いた解析を実施した。第一に、国土交通省XバンドMPレーダーを用いて、高度2-4kmに発生するタマゴの粒径分布を推定し、豪雨をもたらすようなタマゴでは平均粒径が大きいことを示した。第二に、同じくレーダー観測のドップラー風速を用いて気流の渦度解析を行った結果、直径2kmスケール程度の渦が確認できた場合は必ず発達するタマゴであるものの判断できるのはタマゴ発生時より平均的に16分ほど遅れることがわかった。さらにレーダーの格子間隔ごとに微分的に渦度を推定したところ、タマゴ発生時かつタマゴ発生時から5分後においても高値の渦度が確認される場合は発達するタマゴであることが明らかになった。また、複数のレーダーを用いて異なる高度の渦度をみると、発達するタマゴは複数の高度にわたって高値な渦度が存在することを示した。第三に、数値予報GPVによる大気の物理量を解析した結果、ある程度領域の広がりを持って発達するタマゴが起こりうることを示すことができたものの、局地的に関連を見いだすことはできなかった。以上から、XバンドMPレーダー網を用いたドップラー風速による渦度解析、および偏波パラメータの特徴からタマゴが発達するかどうかを実用化レベルで判断できる可能性が高いことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
国土交通省XバンドMPレーダーを用いた解析に関して、当初のもくろみ以上に、タマゴの危険性を精度良く判断できることを示すことができた。一方で、数値予報を用いた危険性予知はそれほど有効に利用できないことがわかったため、レーダー観測により大きい重みを置くことで実用化に向けたタマゴの危険性の判断ができることを明らかにした。また、異なる高度による渦度解析は平成24年度の研究計画の一部であり、本年度の目標と比較して当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
すでに開始している、3次元情報を用いたタマゴの解析を実施する。特に、近畿地方での特別な運用モードを活用して、約1分毎の解析を実施する。また、当初の予定よりも進んでいることから、静止気象衛星MTSATの高頻度観測情報を用いたタマゴの危険性に関しての解析を追加することとする。
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次年度の研究費の使用計画 |
3次元情報を視覚的にわかりやすく捉えるための3次元描画ソフトウェアの購入、成果発表のための旅費、論文の投稿費、を主な項目として使用する予定である。
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