ゲリラ豪雨災害では、地上での降水に先行して大気上空に存在する積乱雲の“タマゴ”の早期探知が至極大切であるが、そのタマゴが豪雨をもたらす積乱雲へ成長するかどうかの判断に関して、以下の観測情報を用いた解析を実施した。 第一に、国土交通省XバンドMPレーダーを用いて、高度2-4kmに発生するタマゴの粒径分布を推定し、豪雨をもたらすようなタマゴでは平均粒径が大きいこと、および数濃度が急速に増加することを示した。第二に、平成23年度に引き続き、レーダー観測のドップラー風速を用いた気流の渦度解析に関して、事例を追加して解析を行った結果、より高い確度で発達するタマゴには高い渦度が確認できることを示した。加えて、タマゴから発達する過程においても同様に高い渦度が確認できた。第三に、静止気象衛星MTSATの高頻度観測情報を用いて、ゲリラ豪雨の発達の過程をXバンドMPレーダーと比較しながら解析した。全ての事例で当てはまるわけではないものの、5分間隔の1km解像度の赤外データでは、XバンドMPレーダーよりも先にタマゴを探知できる可能性があることを示した。以上により、XバンドMPレーダー観測情報と静止気象衛星MTSATの高頻度観測情報を用いることで、ゲリラ豪雨のタマゴを早期に発見できるだけではなく、発達するタマゴかどうかを実用化レベルで判別できる可能性が高いことを明らかにした。今後は、実用化実験を通して、社会へ普及していくことと期待できる。
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