研究課題/領域番号 |
23656307
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松永 信博 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (50157335)
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研究分担者 |
千葉 賢 四日市大学, 環境情報学部, 教授 (90298654)
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キーワード | 沿岸海域環境学 / 3次元流動シミュレーショう / 大気流動シミュレーション / 大気海洋相互作用 |
研究概要 |
九州農政局が提供している2003年から2008年の水質データを解析し,塩淡成層の発生機構,低塩分水塊の風応答特性,低酸素水塊の発生・発達・消滅プロセス,風による低酸素水塊の応答特性を詳細に調べ,これまでの解析結果の妥当性を確認した.また,有明海奥部に流出する河川水の流動および調整池から南北排水門を通して排水される淡水の動態についても明らかにした. 大気流動モデルとしてメソスケール気象モデル(WRFV3.0)を用いて,解析対象期間における有明海周辺地域の風のシミュレーションを行った.海上風シミュレーションでは,広領域(領域1)として九州を中心とした約1,000km四方の領域を計算領域に設定し,計算領域を約100km四方の狭領域(領域3)まで順次3段階に落とす3重ネストを用いた.また,計算には2ウエイネスティング手法を用いた.領域1の植生,土地利用および標高データの作成には,USG30秒のメッシュ値を用いた.領域2~領域3における植生,土地利用データの作成には国土地理院数値情報1/10細分区画土地利用を,標高データの作成には国土地理院数値情報50mメッシュ値を組み込んだ.得られた解析結果を有明海周辺のアメダスデータと九州農政局が諫早湾中央で計測している海上風データと比較し,解析結果の妥当性が確かめられた.さらに,海上10mの高さの平均風速から水表面に作用する風応力を算定する経験式を用いて,海表面に作用する風応力の時・空間分布を求めた.その応力分布を既に構築している有明海3次元流動モデルの海表面に作用させ,流動シミュレーションを行った.有明海における物質輸送パターンは風応力を作用させるか否かによってに大きく異なることを明らかにした.また,調整池から排水された淡水が諫早湾内においてどのような流動パターンを取るかが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①九州農政局が提供している2003年から2008年の水質データを解析し,塩淡成層の発生機構,低塩分水塊の風応答特性,低酸素水塊の発生・発達・消滅プロセス,風による低酸素水塊の応答特性を明らかにすることを,研究目標に掲げている.九州農政局が公表している観測データの解析は順調に進んでおり,有明海奥部に流出する河川水の流動および調整池から南北排水門を通して排水される淡水の動態が,3次元流動モデルを用いて非常によく再現された.よって,研究目標①は,順調に進展したと判断される. ②大気流動モデルとしてメソスケール気象モデル(WRFV3.0)を用いて,解析対象期間における有明海周辺地域の風のシミュレーションを行うことを研究目標に掲げている.今年度は,広領域(領域1)として九州を中心とした約1,000km四方の領域を計算領域に設定し,計算領域を約100km四方の狭領域(領域3)まで順次3段階に落とす3重ネストを用いた.また,計算には2ウエイネスティング手法を用いた.得られた解析結果を有明海周辺のアメダスデータと九州農政局が諫早湾中央で計測している海上風データと比較した結果,解析結果の妥当性が確かめられた.また,有明海表層付近における物質輸送のパターンと輸送量は風応力を作用させるか否かによってに大きく異なることを明らかにした.さらに,調整池から排水された淡水が諫早湾内においてどのような流動パターンを取るかを明らかにした.よって,研究目標②は,順調に進展したと判断される.
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今後の研究の推進方策 |
開発した有明海3次元流動モデルとWRFによる大気流動シミュレーションを組み合わせることにより,海表面に時空間的に変化する風応力分布を与え場合の流動特性を明らかにする.また,風応力分布を空間的に一様に与えた場合と,流動パターン並びに物質輸送プロセスがどのように異なるかを定量化する.さらに,これまで得た研究成果を取りまとめ,諫早湾内の流動特性に関する風応力の役割について報告書を作成する.
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次年度の研究費の使用計画 |
①有明海3次元流動モデルとWRFによる大気流動シミュレーションを結合する ②九州農政協の観測結果と解析結果を比較検討し,再現性の向上を明らかにする. ③これまで行ってきた仮想計算と再現計算の比較検討を行い,再現計算の優位性を明らかにする. ④これまでに得られた研究成果を有機的にまとめ,報告書を作成する.
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