研究課題
有明海奥部には筑後川をはじめ,六角川,嘉瀬川,矢部川,菊池川,白川,緑川の7つの一級河川が流れ込んでいる.海域に流れ込む河川水は,栄養塩を供給すると共に塩淡成層を形成するため,赤潮や貧酸素水塊の発生要因となる.諫早湾内の淡水は有明海からの流入量が支配的で,諫早湾潮受け堤防から排水された淡水量の5倍程度を占めると言われている.研究代表者は,九州農政局が測得した塩分データを解析し,夏季に諫早湾全域で形成される大規模で強い塩淡成層は,主に有明海奥部に流出する河川水に起因していることを見出した.本研究では,風応力分布を組み込んだ有明海 3次元流動シミュレーションモデルを構築し,2009年7月1日~31日を対象に各河川から供給された淡水粒子の流動特性を解析した.九州農政局が取得した塩分データを解析し,計算結果の再現性を確認するとともに各河川から流出した淡水がどのような割合で諫早湾内に流入・滞留するかについて検討した.また,卓越風向を北北東と南南西に固定した仮想計算を行い,卓越風向の違いによって諫早湾内への淡水流入プロセスがどのように変化するかについても検討した. さらに,諫早湾内に形成される大規模塩淡成層の要因について調べた.得られた結果は以下の通りである.1)諫早湾内に形成される大規模塩淡成層は,南北排水門からの淡水排水というよりはむしろ有明海に注ぐ一級河川からの淡水供給によって形成される.2)成層形成に最も大きな影響をもつ河川は筑後川であり,筑後川起源の淡水は,諫早湾に存在する河川起源の淡水の約61%を占める.3)諫早湾への河川水の流入は,基本的に潮汐運動のみによって引き起こされる.4)海表面に作用する風応力は諫早湾内に流入・流出する淡水量に大きな影響を与える.北寄りの風の連吹は,諫早湾内に存在する淡水の流出を抑制し,南寄りの風の連吹は,諫早湾以北に河口をもつ河川からの淡水流入を抑制する.
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