研究概要 |
本研究の目的は,同時多点分光が可能な近赤外線イメージング分光器等を利用した種類別漂着ゴミ量連続モニタリングシステムの開発に挑戦することである.特に近年有害化学物質を含んでいる事が明らかになったプラスチック漂着ゴミを他の漂着ゴミと識別する技術を開発することである.本年度は,五島列島での近赤外線イメージング分光器を利用した漂着ゴミ撮影の実施,およびプラスチックゴミ識別アルゴリズムの精度検証用のプラスチックゴミ(トゥルースデータ)の採取を行った.さらに,現地撮影時における近赤外線イメージング分光器の取り扱いやセッティングの困難さらか判断し,より簡便でより安価なプラスチックゴミ識別技術として,プラスチックゴミの色に着目した可視画像解析に基づく手法の開発を並行して行った.プラスチックゴミの色を定量化するための色空間としてCIELUV色空間を用いた.まず,何枚かの漂着ゴミ撮影可視画像を用いてプラスチックゴミに対応する画素のRGB値をCIELUV色空間の座標(L*, u*, v*)値に変換し,プラスチックゴミのカラーリファレンスを作成しておく.実際には,日射角度・量に応じて同じ色でも色空間内での値が変化してしまうため,作成したカラーリファレンスは色空間内では楕円体となる.そして,様々な時刻に撮影された漂着ゴミ画像のRGB値を(L*, u*, v*)値に変換し,各画素の(L*, u*, v*)値が予め決めておいたカラーリファレンス内に位置するかどうかを判断することによって,各画素に写っている物体がプラスチックゴミかどうかを決定する.この手法を北海道稚内市,山形県酒田市,石川県輪島市および長崎県対馬市で撮影された漂着ゴミ可視画像に適用したところ20%の誤差でプラスチックゴミを他の漂着ゴミ(流木等)や背景(岩,砂,植生)から識別可能であることが確認された.
|