漂着ゴミの影響は景観や航行安全の問題に留まらない。漂着ゴミはその種類に応じて重金属等の有害化学物質を含んでいる。近年この有害化学物質の環境中への溶出とそれに伴う生態系影響が世界的に注目され始めた。生態系影響を正確に把握するためには溶出実験等の化学的手法に加え、海洋における種類別の漂着ゴミ動態を解明するという物理的アプローチが必要不可欠である。しかしながら人力による散発的なゴミ回収調査に代表される当該研究分野の実力はこの要請に応えるだけのレベルにない。最大の原因は漂着ゴミ量の時間変化を連続計測するという最も基本的な技術が確立されていない点にある。そこで本研究では画像解析を利用しプラスチック漂着ゴミ量を連続モニタリングするシステムの開発に挑戦した。 本研究では山形県酒田市飛島に設置したWebカメラ撮影画像を用いて様々な色のプラスチックゴミ(以下、PD)の画素を検出するための手法(MEB)を世界に先駆けて開発した。MEBは明度を用いてPD画素を検出する既往手法と比べて様々な色のPD画素を検出できるという点で優れている。さらに山形県酒田市飛島を含む対馬暖流沿い日本沿岸4地点に設置したWebカメラ撮影画像にMEBと射影変換手法を適用することでPD漂着量を計算して各地点における長期間の時系列変動を明らかにした。本研究で計算されるPD漂着量には約18%の計測誤差はあるが、PD漂着量の時系列変動を高時間分解能で得られることに成功した。また、計測誤差の要因についても検討を行い、ゴミ側面の色が日射角度に応じて暗くなることが主な原因であることを突き止めた。Webカメラを用いてPD漂着量を多地点で連続計測することにより、今後PD漂着量の変動要因の詳細な調査、環境負荷を考慮した計画・重点的な海岸清掃及び海ゴミの輸送実態の解明に利活用できると考えられる。
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