研究概要 |
本研究の目的は,バスや鉄道システムに典型的に見られる運行不安定性(e.g., 団子運転による運行遅延の増幅現象)を解消する「自律分散型制御」の設計法を示すことである.その方法の理論的基盤となるアイディアは,制御問題で実現したい状態(e.g., 定時隔運行状態)と「安定ゲーム」 (stable game) の均衡状態を対応付けることである.この提案理論を用いれば,システムの構成要素(e.g., バス車両,鉄道列車,道路信号機)に課すべき「行動ルール」を系統的に設計できる.そして,その設定されたルールに基づいて各要素が自律分散・適応的に行動した集積的状態が,実現したいシステム状態に安定的に収束する.本研究では,このアプローチをバス・鉄道の運行安定化問題,および,道路交通における自律分散型の信号制御問題に適用し,その制御法の頑健性を系統的に検証する. 平成23年度は,確定論的な状況に対する運行安定化問題と信号制御問題の各々に対して,プロトタイプ・モデルと理論を構築した.より具体的には,1) 制御なし状態での対象システムのモデル構築(状態方程式の定式化),2) 対象システム・モデルで実現したい状態を均衡解とするゲーム条件の設計,3) 均衡解の(局所的)安定性条件を満たすプレイヤ(鉄道・バス車両/信号機等のシステム構成要素)の行動ル-ル(自律分散型制御法)の導出,を行った.また,運行安定化問題に対して,数値実験により,提案制御スキームの頑健性を検証した.
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