研究課題/領域番号 |
23656313
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
高木 朗義 岐阜大学, 工学部, 教授 (30322134)
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研究分担者 |
倉内 文孝 岐阜大学, 工学部, 准教授 (10263104)
北浦 康嗣 帝塚山大学, 経済学部, 講師 (90565300)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 低炭素社会 / face to face / CO2排出抑制 / 行動変容 / 進化ゲーム / 公共交通 / 公共交通利用促進 |
研究概要 |
CO2排出抑制行動の促進のための方法として,本研究では,クチコミによる個人間の情報交換による情報共有に着目している.クチコミによってCO2排出抑制行動が普及していく様子を表現するに当たり,進化ゲーム理論を適用し,様々な条件下で個人の行動変容に関するシミュレーション分析を繰り返し行い,個人のCO2排出抑制行動がどのように変化していくかを分析した.具体的な内容は,以下のとおりである.(1)進化ゲーム理論に基づく行動変容モデルのフレームワークの構築 進化ゲーム理論における模倣を仮定した非対称ゲームのひとつの模倣ダイナミクスを拡張し,行動変容モデルを構築した.非対称ゲームの模倣ダイナミクスとは,個人の意思決定時において「他者の利得」と「自身の利得」を比較して,他者の行動を模倣するか,現在の行動を続けるか,を行動選択するとしている.しかしながら,個人がCO2排出抑制行動の意思決定をする場合,他者の行動を模倣する利得は「他者の利得」ではなく「自身がその行動をとる時に得る利得」であると考えられる.なお,個人はCO2排出抑制行動に対する費用(時間,労力等),便益(節約金),遺産価値の増大分(将来にわたって発生するCO2排出抑制効果等)の3要素に基づいて,CO2排出抑制行動をするか否か決定するものと想定した.(2)行動シミュレーションに基づくCO2排出抑制行動変容に関する基礎的分析 進化ゲーム理論に基づく行動変容モデルを用いて,CO2排出抑制行動変容に関するシミュレーションを行った.とくに,多数の個人の何人かがそれぞれ他者とコミュニケーションをとると,CO2排出抑制行動に関する情報を交換し,自身の行動を変容するかどうかを決定した.このような行動シミュレーションを様々な条件で繰り返すことによって,CO2排出抑制行動に関する行動変容のプロセスや,その行動に影響を及ぼす要因・条件を整理した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度当初の計画では,アンケート調査を実施する計画だったが,調査対象地域における調整に時間を要することが年度途中に判明したため,アンケート調査を次年度に後回しし,その代わりに次年度行う予定であった行動シミュレーションに基づくCO2排出抑制行動変容に関する基礎的分析を先行して行った.そのため,進捗率としては当初の目標を達成している.
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今後の研究の推進方策 |
(1)アンケート調査による行動変容モデルの特定化(倉内,高木) H23年度で整理した個人のCO2排出抑制行動において影響を及ぼす要因に関するパラメータを,アンケート調査で得られたデータに基づいて推定する.アンケートでは,様々なCO2排出抑制行動(省エネ行動)における実施状況と取り組みやすさを調査する.これにより,個人の嗜好を考慮したより現実に近い行動変容モデルを特定化することができる.表に示したように,各CO2排出抑制行動に対して,実施状況を「現在取り組んでいる」,「今後取り組みたい」,「取り組む気はない」の3段階,どの程度取り組みやすいと考えているかを調査する予定である.個人属性については,年齢,性別,世帯人数などを調査する.(2)ケーススタディに基づくCO2排出抑制行動促進策に関する分析(全員) H23年度で整理したCO2排出抑制行動変容に影響を及ぼす要因や条件に基づいて,より具体的なCO2排出抑制行動促進策を検討するために,実際の地域を対象とし,様々な政策オプションを想定したケーススタディを行う.これにより,促進策に関する政策的な示唆を獲得するとともに,効率的かつ効果的で実現性の高い施策を見いだす.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画では,(1)アンケート調査,(2)モデル特定化(統計解析),(3)施策分析(数値シミュレーション)の3項目からなるが,このうち,主な研究費としては,(1)アンケート調査実施のための旅費と謝金,(2)統計解析および数値シミュレーションのためのコンピュータと謝金,(3)研究打合せおよび学会発表のための旅費について,使用を予定している.
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