研究課題/領域番号 |
23656317
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
多々納 裕一 京都大学, 防災研究所, 教授 (20207038)
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研究分担者 |
畑山 満則 京都大学, 防災研究所, 准教授 (10346059)
梶谷 義雄 京都大学, 防災研究所, 准教授 (80371441)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 風評被害 / パラメトリック保険 / 時系列分析 / 自然災害 / インデックス |
研究概要 |
本研究は、風評被害の軽減のためのパラメトリック保険の成立可能性を検討し、その設計を可能とする方法論の開発を目指すものである。 風評被害はその定義もいまだ曖昧であり、どこまでを風評被害として評価するのか確立された考え方が存在しない。本研究ではこの点をレビュー、風評被害の定義とその評価方法について整理した。 パラメトリック保険は、適当なインデックスを作成しそのインデックスが既定の値に達すると保険金が支払われるという仕組みであり、被害の査定を行ってから保険金を決定する従来の保険とは大きく異なる。近年途上国での災害リスクファイナンシングの一手段として着目されてきている。本研究ではその研究動向をレビューし、その設計方法について把握した。 風評被害の実態調査:本研究における最も重要な点は、風評被害の実態を明らかにしそれを定量化する作業である。新潟県中越沖地震や伊豆群発地震などによる周辺間の観光地への影響など、風評被害が生じたと考えられる事例を対象とし、その被害実態を分析を行った。過去の地震を対象として、刊行入り込み客数に及ぼした地震の影響を時系列データから算出する方法を考案し、実際に実データを用いて推計を行った。併せて、東日本大震災に関連した風評被害関連データの収集も試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東日本大震災の発生に伴い、その対応に追われたが、風評被害の定義や評価法に関するレビュー、パラメトリック保険に関するレビュー、地震が入り込み客数に及ぼす影響分析方法の開発など、当初予定していた以上に順調に研究は進展している。その成果は、土木学会等で発表するとともに、論文として投稿している。東日本大震災の発生によって、新たに得られたデータに関してもデータの収集・整理を進めており、これらを利用した分析も今後予定している。
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今後の研究の推進方策 |
東日本大震災の発生によって、新たに得られたデータに関してもデータの収集・整理を進めており、これらを利用した分析も今後予定している。[1]インデックス作成モジュールの開発:平成24年度は、Web記事や新聞記事を自動的に収集し、そこからインデックスを作成するシステムを開発する。Web記事や新聞記事を自動的に収集するシステムはWebクローラーと呼ばれる。本研究はカスタマイズ可能なWebクローラーを提供する市販のサービスを用いて、風評被害につながりうる記事を自動的に収集し、そこからインデックスを作成するシステムを開発する。 風評被害に関するインデックスは、被害を受けた地域の記述が、風評被害の原因となるキーワードとどの程度の強度、頻度で同時に出現していたかが重要な要因となる。クローラーの自動検索機能で頻度を計測するとともに、記事の大きさや語彙間の距離などにもとづいて強度を測定するようにシステムを設計する。[2]被害と相関性の高いインデックスの選定:作成された様々なインデックスと、実際に観察された被害との相関を比較分析することで、被害と相関の高いインデックスを選定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
東日本大震災の発生を受けて研究計画を若干見直し、分析に今回新たに得られたデータを用いることとした。このために、本年度使用予定であった経費の一部を用いて次年度に現地調査を行うこととした。本年度は、主として刊行データを用いてデータの収集・整理を進めてきたが、次年度には、現地でのヒアリングや追加調査を予定しており、このための研究費の追加的使用を考えている。 また、当初の予定道どおり、カスタマイズ可能なWebクローラーを提供する市販のサービスを用いて、風評被害につながりうる記事を自動的に収集し、そこからインデックスを作成するシステムを開発する予定であり、そのための物品費や人件費等が必要となる。
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