研究課題/領域番号 |
23656317
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
多々納 裕一 京都大学, 防災研究所, 教授 (20207038)
|
研究分担者 |
畑山 満則 京都大学, 防災研究所, 准教授 (10346059)
梶谷 義雄 京都大学, 防災研究所, 准教授 (80371441)
|
キーワード | 風評被害 / パラメトリック保険 / 時系列分析 / 自然災害 / インデックス |
研究概要 |
東日本大震災によって広域に風評被害が発生したことを鑑み,被災地の商品の価格や観光入込客数について情報収集を実施した.情報の収集にあたっては,新聞やテレビなどの報道情報を調査するとともに,Web上に存在する情報を網羅的に収集するために,Webクローラーを活用した.さらに,宿泊客数の情報を収集するために,震災による物的被害の大きかった地域とその周辺地域に立地する宿泊施設に対してアンケート調査を実施した.得られた情報の分析を通じ,災害後の宿泊客数には,復興需要による宿泊客数の増加,観光を目的とした宿泊客数の減少の両方の影響が存在し,その空間的重なりの状況によって,物的被害の小さな地域においても宿泊客数の減少が発生している特徴が明らかとなった.復興需要を控除した後の宿泊客数には,震度や津波浸水エリアからの距離が被害に有意な大きな影響を及ぼしているほか,宿泊施設のタイプなどの各種属性が影響を与えていることが分かった.たとえば,周辺の娯楽産業と連携しているような宿泊施設では,震災後の自粛の影響と相まって,被害影響は大きくなるような傾向がみられた.得られた統計モデルは,津波浸水エリアや震度などのハザード情報と宿泊施設の属性を入力情報とするパラメトリック保険の作成に寄与することが期待できる.パラメトリック保険の購入行動については,支払いスピード,プレミアム,発生確率の認知など,今後の調査に必要となる基礎的な情報について整理を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由:東日本大震災の情報収集を追加検討に加えるなど,研究計画の修正を行ったが,これにより,風評被害の実態に関連する重要な情報を入手することができた.ハザード情報を入力とする統計モデルを試作することができ,パラメトリック型保険の設計に大きく前進したものと考えられる.
|
今後の研究の推進方策 |
風評被害の大きな要因の一つとして,情報の非対称性が挙げられる.すなわち,サービスの供給水準が変わらないが,消費者側にその情報が伝わらずサービスの供給水準に対する信頼が得られていないことが要因となる.構築した統計モデルを改良し,この種の影響の大きさを計量するための方法を検討する.さらに,パラメトリック保険の購入行動について,支払意志額等の調査を実施する.
|
次年度の研究費の使用計画 |
本年度もアンケート調査を実施するため,謝金・郵送等の費用を計上している.また,本年度は研究の最終年度に相当するため,国内外での研究発表用の旅費を多く計上している.
|