本研究では交通ネットワークと情報ネットワークを統合した「交通・情報ネットワーク」を定式化しその特性を分析する.交通主体の所持する情報は交通行動の決定の際の重要な要因であり,その伝搬メカニズムは交通行動決定に大きく影響する.一方で,情報は物理的に近い人やもの(近所や職場の知人や看板など)からも多く伝搬するため,交通行動から情報取得への逆方向の影響も重要である.これは交通主体が行動する「交通ネットワーク」と情報が伝搬する「情報ネットワーク」が相互作用することを意味する.本研究ではこの特性を分析し,交通・情報ネットワーク上で情報がどのように局在化するかを調べる. 平成24年度は本研究課題の2年目であり,おもに,平成23年度の結果の評価とモデルの見直し,および,ケーススタディを行った.モデルの見直しについては特に情報ネットワークと情報伝搬に関する点で重点的に行った.とりわけ,平成23年3月11日の東日本大震災に関わる避難行動において見られた情報伝搬と交通行動(避難行動)の関連性について,各種の調査結果が明らかになるにつれ,本研究との関連性が深いことが判明し,それに関する知見を活かしたモデルの見直しを行った.あわせて,情報探索行動一般・交通行動についても一定の再検討を実施した. ケーススタディについては上記の避難行動の記述を選定した.避難行動そのものについては防災分野での知見が多くあるが,本研究は交通行動のモデリングという立場をとり,特に,ハザードの種類を特定しない形での避難行動の記述に努めた.情報伝搬による避難勧誘をマクロ的およびミクロ的に記述し,それについて,特にマクロ的なものについて,数理モデルによるダイナミクスの検討を行った.ネットワークの混雑を考慮した総合モデルを組み込んだ上で,本研究で示した交通・情報ネットワークの特性が避難行動においてどのように影響するかを検証した.
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