研究課題/領域番号 |
23656320
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
喜多 秀行 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50135521)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | サービスの質 / 評価構造 / 瞬間効用 / 更新プロセス / 集計メカニズム |
研究概要 |
本研究は,ドライバーがある区間を走行し終えた時に感じる走行環境の質(記憶効用)は,時々刻々直面する局所的な走行環境に対する評価(瞬間効用)が累積して形成されたものと考え,先に開発した局所的な走行環境の質を定量的に評価するモデル(瞬間効用モデル)をツールとして,局所的な評価である「瞬間効用」から全域的評価である「記憶効用」が形成されるメカニズムを工学モデルとして構築することを目的としたものである. 現在は,3年計画の初年度が終了した時点であり,進捗状況は「現在までの達成度」に記すように順調であり,既にいくつかの知見が得られつつある.そのひとつは,ドライバーの認識・評価の形成メカニズムにおいて,"順序効果"が認識レベルと更新レベルの双方に存在することが室内実験を通じて確認されたことである.また,両者を内包する更新モデルを予備的に同定したところ,推計されたパラメータ値にドライバー間で少なからぬ差異が存在していることが判明し,また,異なるパラメータを設定して評価の更新プロセスを追跡することにより心理学や交通工学の分野で提案されている種々の経験則(ex. Peak-end則)や実験式(ex. Max-average則)などを結果として生成することができた.これは,多様な認識・評価の形成メカニズムの背後に統一的なメカニズムが存在することを示唆するものであり,認知心理学と工学の橋渡しとしての本研究のアプローチの有用性を示すものと考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の研究では,(1)研究レビュー,(2)局所的走行環境の評価指標(瞬間効用モデル)の改良,(3)局所的評価値の空間分布構造の把握,(4)実走行環境下での走行環境評価データ(地点・区間)の収集,(5)全域的評価の形成メカニズムに関するモデリングのフレーム構築,を計画していた. このうち,(1)については主たる既往研究のレビューを終えている.(2)については,認識段階と更新段階の2種類の順序効果が存在することを明らかにし,瞬間効用モデルでは前者のみを考慮することとして改良を加えた.(3)については瞬間効用の地点分布が対象とする区間内ではほぼ均質であると見なしてよいことを確認し,マクロ交通特性と関係づけた推定式を提案した.(4)については,先行研究で収集した画像/発話データを用いて24年度に実施予定の(6)全域的評価の形成メカニズムに関する実証分析について予備的な検討を行い,更新過程における評価の推移についてもデータ収集を行う必要性が明らかとなったため,(8)順序効果をコントロールした走行環境評価データの収集を23年度に先行的に実施し,いくつかの知見を得た.この知見に基づき,(5)についても24年度に開発予定の(7)地点評価値に基づく区間評価値の確信度形成モデルに関わる検討を行い,そのコアとなる"瞬間確信度"に関連した形でモデルのフレームを構築した. 上記のように,年度計画の一部を入れ替えて研究を進めた結果,全体的な達成度としては当初の予定どおり,または若干早めに研究が進展している.以上が,「おおむね順調に進展している」と評価した理由である.
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの達成度」で述べたように,一部順序を変更した実施計画の下で24年度も引き続き研究を推進していく.「(6)全域的評価の形成メカニズムに関する実証分析」については,これまでに整理した区間全体に関する主観的評価値の更新過程をベースとするフレームを基礎とするが,並行してベイズ流の更新過程についても検討を加え,両者の長所・短所を踏まえたフレームをする.このフレームに沿って「(7)地点評価値に基づく区間評価値の確信度形成モデルの開発」を行うが,瞬間確信度関数のパラメータと更新ウェイトのパラメータをどのように組み合わせて(あるいは統合して)更新レベルの順序効果を記述するかがひとつのポイントとなるものと考えている。このモデル開発を踏まえて,23年度から繰り越した「(4)実走行環境下での走行環境評価データ(地点・区間)の収集」を行い,それに基づき「(8)順序効果をコントロールした走行環境評価データの収集」を進めるとともに,双方のデータを有機的に組み合わせた室内実験によるパラメータ推定やドライバーの異質性に関わる分析等を経て知見を獲得し,25年度に予定している全体モデルの構築と研究のとりまとめの基礎情報を蓄積する予定である. なお,23年度末に国内の研究協力者に異動があり,複数の機関をまたいでの研究遂行となるが,連絡を密にとることにより支障が生じないよう留意したい.
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次年度の研究費の使用計画 |
実走行環境下におけるドライバーの認識・評価データを収集するための走行実験と,当該収集データから抽出したビデオクリップを用いる室内実験を実施するため,実験の遂行とデータ分析に関わる資機材費,謝金,交通費等が必要である.また,研究打ち合わせや資料収集,成果発表等に伴う旅費等も必要となるため,これらに対して研究費の使用を予定している.
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