研究課題/領域番号 |
23656320
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
喜多 秀行 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50135521)
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キーワード | 交通計画 / サービスの質の評価 / 瞬間効用 / 地点効用 / 区間効用 / 形成メカニズム |
研究概要 |
ドライバーがある区間を走行し終えた時に感じる走行環境の質(記憶効用)は,時々刻々直面する局所的な走行環境に対する評価(瞬間効用)が累積して形成されたものと考えられる.しかし,瞬間効用から記憶効用がどのように形成されるかについてはほとんど何もわかっていないため,本研究では,先に開発した局所的な走行環境の質を定量的に評価するモデル(瞬間効用モデル)をツールとして,局所的な評価である「瞬間効用」から全域的評価である「区間効用」が形成されるメカニズムを工学モデルとして構築することを目的としている. 24年度は,23年度の室内実験結果を踏まえて,区間効用の確信度を各地点ごとに更新するモデルの地点別情報となる「瞬間確信度」の形成構造に焦点を絞り,室内実験データの解析結果に基づく新たな瞬間確信度関数を提案するとともに,既存モデルに比して現象説明力がより向上することを示した.この瞬間確信度関数を用いて確信度更新モデルのパラメータα,βを推定し,区間効用の確信度分布の実測値と推定値を比較したところ,瞬間確信度関数のパラメータδ,εと確信度更新モデルのパラメータα,βとの間に因果関係が存在している可能性が示唆されたため,両者の関係をさらに分析して確信度更新モデルを再構築し,記憶効用の形成メカニズムの解明に繋げたいと考えている.また,上記と並行して,日常的に収集されている交通量常時観測データから地点別瞬間効用分布を推定しピークエンド則を介して区間効用を推計する手法を構築し,本研究の成果を道路の性能照査型設計・運用管理に活用するための検討を行った.これらの成果は土木学会や世界交通会議(WCTR)で報告する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,種々のビデオクリップに対する地点評価値と区間評価値ならびに地点ごとの瞬間確信度の表明値を収集した室内実験(23年度に実施)のデータを解析し,「完全記憶下における記憶効用の形成に関する理論モデル」を開発した.本モデルは,25年度に研究を予定している「不完全記憶下における理論モデル」への拡張のための構造を内包しており,この点については当初の計画以上に進展している.しかし,データ解析の過程で実験データをさらに充実する必要性が出てきたため,追加的な実験を実施し,実証分析を行う予定である.これらを勘案し,「概ね順調に進展している」と評価した.
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今後の研究の推進方策 |
「研究実績の概要」および「現在までの達成度」欄でも述べたように,最終年度である25年度は,地点評価値と区間評価値ならびに地点別瞬間確信度の表明値に関する補足実験を行うとともに,追加的に収集したデータの解析結果をも援用して,24年度に構築した区間効用値に対する確信度更新モデルの理論的・実証的検討を進め,記憶効用の形成メカニズムの解明に繋げる予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
これまでに実施した実験においては,ビデオクリップ再生のための機器に一部性能不足があったため,補足実験に際して,必要な性能を備えたパーソナル・コンピュータおよび周辺機器を購入するとともに,実験協力者への謝金およびデータ解析補助者への謝金を計上している.また,これまで得られた研究成果について研究協力者と討議するための研究打合せ旅費,資料収集旅費,および,研究成果発表旅費を使用する予定である.
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