研究課題/領域番号 |
23656324
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
岡部 聡 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10253816)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | バイオ燃料電池 / 電気生産細菌 / 細胞外電子伝達 |
研究概要 |
本研究の目的は、廃水処理、余剰汚泥発生量の削減、電気エネルギーの回収、および二酸化炭素排出量の削減を同時に可能とする、一石四鳥の次世代型廃水処理システム(バイオ燃料電池)を開発することである。バイオ燃料電池の実用化には電力生産力の向上が不可欠である。本年度は、まず、アノード反応、すなわち、嫌気的有機物分解および有機物分解からの電子の獲得効率の向上に焦点を当てた。 我々の研究室で分離培養に成功している3種類の電気生産細菌(Hydrogenophaga sp. AR20株、Aeromonas sp. ISO2-3株、Klebsiella sp. 1G株)を用いて、純粋培養系、二双培養系、複合系MFCを構築し、回分式実験を行い電気生産を検証した。その結果、ISO2-3株と1G株の二双培養系において、最大電力密度700mW/m2を達成した。この値は、それぞれの単独培養および複合系に比べて約2倍高い電力密度であった。 これら単離した電気生産性細菌の電子伝達メカニズムを解明するため、Cyclic voltammetry(CV)およびキノン分析を行った。その結果、ISO2-3株および1-G株はともにバイオフィルムとして酸化還元ピークを示した。また、二双培養系に関して、同様のCV解析を行ったところ、0.03及び0.33Vで酸化ピーク、-0.2Vで還元ピークを示したことから、電子伝達にかかわるキノンまたはシトクロムCなどの関与が示唆された。キノン分析からは、バイオフィルム試料からユビキノンが検出された。今後は、このユビキノンの役割を解明していく予定である。 しかし、実用化の目安である1,000 W/m3(アノード槽体積)以上の電力密度は達成されていない。従って、来年度は研究計画に示したように、カソード反応を促進することにより、電力密度を高めたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、バイオ燃料電池の実用化に向けて、アノード槽内の微生物生態系の解析、電気生産能力の高い微生物の同定、および電子伝達メカニズムの解析などにより、電力生産力の向上を図ることを目指した。上述したように、ISO2-3株と1G株の二双培養系において、最大電力密度700mW/m2を達成した。この値は、それぞれの単独培養および複合系に比べて約2倍高い電力密度であり、電気生産能力を単独培養に比較して向上させることに成功した。また、二双培養系で高い電力密度が得られた理由を解明するために、Cyclic voltammetry(CV)およびキノン分析を行ない、電子伝達にかかわるであろうユビキノン等の関与が明らかとなった。故に、当初の目的をおおむね達成したと評価している。 さらに、本年度に向けて、カソード反応を促進するための、MFCの運転条件の検討や使用する材料等の検討を同時に行っており来年度に向けた準備も整った。故に、当初の目的をおおむね達成したと評価している。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続きバイオ燃料電池の実用化に向けて、電力生産力の向上を図ることを目指して研究を行う予定である。昨年と同様に、アノード槽内の微生物生態系の解析、電気生産能力の高い微生物の同定、および電子伝達メカニズムの解析などにより、電力生産力の向上を図ることを継続する。加えて、本年度は、カソード反応すなわち、電極表面上において、アノード槽からプロトン交換膜(PEM)を通過し輸送されたプロトン(H+)と電気回路によって運ばれた電子(e-)が酸素(O2)と反応し、水(H2O)を生成する反応を促進させることで電力生産の向上を図る。カソード反応を促進させるためには、プロトンの輸送が最も重要である。特に一層式(空気カソード式)バイオ燃料電池の場合、水(培養液または廃水)がプロトン交換膜を透過する速度は極めて遅い(もし、水の透過速度が高い場合は水漏れとなる)。すなわち、プロトンの供給速度がカソード反応を律速する。本年度は、以下に示す2つの方法でプロトン供給速度を向上させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
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