本研究は、廃水処理と電気エネルギー回収が同時に可能となることが期待されているバイオ燃料電池のさらなる発電能力の向上を図ることを目的としている。一般的な空気カソードバイオ燃料電池では、カソード反応が律速しているため、カソード反応の促進、すなわち、プロトン供給の促進を図ることが重要である。 本年度は、最適化したアノード条件で引き続き一層式(空気カソード式)バイオ燃料電池を運転した。発生電圧、電流が安定した後、電力生産能力がアノード反応またはカソード反応のどちら律速しているのか調査するために、空気組成を変化させて曝気した。さらに、カソード反応(酸素、プロトン、電子が反応して水かできる反応)におて、プロトンの透過速度または反応自体が律速しているか調査した。カソード反応を最適化するために、以下の2点について検討する。①プロトンの外部からの供給(ミストによる供給)、②プロトンの外部からの供給(CO2による供給)。供給する空気中のCO2濃度を高め、カソード電極表面上に存在する高pH水に溶解させることによりプロトンの供給、電気伝導率の向上を図った。空気中のCO2 は容易に高pH水に溶解しプロトンを供給すると考えられるため、供給するガス組成(CO2とO2の濃度比)および供給速度を変化させて、最大の電力密度が得られる条件を求めた。この時のアノードからのプロトンの輸送量、二酸化炭素の溶解によるプロトンの供給量、および水の電離によるプロトンの供給量をそれぞれ定量した。その結果、二酸化炭素および水分の供給は、プロトン供給を促進し発電量を大幅(400%)に増大させることが明らかとなった。このことは、バイオ燃料電池は、廃水処理やエネルギー回収に加え、二酸化炭素をも回収できることを示すものであり、バイオ燃料電池の新たな付加価値を示した。
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